動き出す運命~四十一話~
いつものように学校から戻ると 家の中から笑い声がした。
シノさんが
「本当にいい加減にしてくださいよ。」と言った。
「ただいま帰りました。」
リビングに顔を出すと
「おかえり~」圭さんが微笑んでいた。
私の心臓もビックリしてドキドキしてる。
「K高受かったんだってね。さっきシノさんから聞いたよ。
頑張ってるね。えらいぞ。」と言って微笑んだ。
その言葉を待ってた~~
私は嬉しくて嬉しくてだけど恥ずかして何も言えない。
「少し大きくなったかな?」
意地悪な圭さん
まだまだ大きくならないのに・・・
とうとう睦月にも越されてしまったわ…
なんて気のきいた返事も 胸の高鳴りが言わせてくれなくて
私は恥ずかしくて下を向いた。
「もうすぐ奥さまも戻られますよ。
きっと驚くわ。圭さんはまた突然なんだから~」
「約束って嫌いなんだよな。
守らなきゃならないだろ~俺ってかなりチャラ男だから。」
「恋人は・・・・?できました?」
シノさん その質問やめてよ・・・・
背中に冷たい汗を感じた。
「その発表はここではタブーだよ。
彼女がボコボコにされるでしょう?
大切にしまってあるよ。」圭さんの言葉にアンテナが立った。
しまってある?
彼女・・・・いるんですか~~~
すごいショックだった。
バカ シノさんが余計なこと聞くから
「あら~~彼女がうらやましいわ~~
でも本当に見つからないようにしないと……ファンクラブは怖いですよ。」
「大丈夫。大切に大切に……」
そう言うと優しい笑顔で階段を登って行った。
「幸ちゃん~今日は忙しいわよ~~
圭さんの大好きなとんかつに献立変更よ~~」
シノさんも少女のようにはしゃいでる。
圭さんって人は魔法使いみたいな人だなって思う。
みんなを笑顔にさせるから……
制服を脱いでいつものように着替えをした。
こんな格好ばっかり……
雑誌で読んだようなお洒落をして圭さんの前に現れてみたい
私はそう思ったけど
Tシャツとジーンズ……そしてエプロン
私はため息をついた。
あ・・・そうだ・・・・
この間 雑誌で読んだ髪の毛
髪の毛ならお洒落できる
私はそう思ったら嬉しくなった。
いつもは下でひっつめている髪の毛を
今日は高く右側で束ねてみた。
髪の毛を高くまとめただけなのに 私の顔は全然違う顔になった。
モデルにも負けてない~
幸 可愛い~~
いつものように自分を絶賛してあげる。
だって圭さんと何年ぶりだろう・・・
華子や凛は長い休みがあれば 観光してくるといいながら
圭さんに会いに行っていた。
ただ圭さんが 自分のマンションを教えてくれないし
バイトで忙しいと断られて 一日だけ平等に二人と遊んでくれるようだった。
二人が圭さんの話をしているのを
私は耳をダンボにして聞いている。
レンタカーを運転して 観光したとか
助手席を一時間交代にしたとか
プリクラをやっと一枚だけ撮ってくれたとか
私も会いたい
ずっとずっと思っていたから……。
圭さんが褒めてくれたのがうれしかった。
もっともっとたくさんお話がしたい……。
そして少しでいいから
幸が可愛くなったなって思ってほしかったから……。
「あら なんか感じが違うわね。」
とんかつの衣をつけながら シノさんが言った。
「そうですか?ちょっと違うとこで縛ってみたんだけど……。」
「幸ちゃんも年頃なんだから少しお洒落しないとね。」
「あれ?圭さんは?」
「さっきお部屋に行ったら 眠っていたわ。」
「あ・・・そうなんですか……」ちょっと残念。
「またね…内緒にしておいてっていうから…
夕飯食べる時まで内緒にしておきましょ。
また大騒ぎだろうけどね……。」
睦月が帰ってきて 叔母が帰ってきて
華子が帰ってきた。
そして少ししてから叔父が帰ってきていつもの時間が始まった。