呪い~四話~
小学校に上がって 私は得意になって
ピンクのランドセルを背負った。
入学式には園長先生と先生が保護者として来ていた。
周りを見渡してもみんなあたりまえに
我が子の成長を頼もしく見つめる愛に溢れる目をした親がいる。
私の両親だって生きていたら
きっとあの場所で微笑んでくれていただろう…。
逞しい父と美しい母を自慢して
私は何度もふり向いて手を振っただろう。
「あんたライラック園の子でしょ?」
入学式で廊下に出て並んでいたら前の子がふり向いて言った。
私が黙っていると
「なんで親もいないのにキレイなランドセル持ってるの?」
周りの子が興味深げに私を注目した。
私が答えないとその子は
「園の子の持ってるものはみんなが使っていらなくなったものなのに
ランドセルだけピカピカで変~~うふふ~」
その子は私の着せられた何人も着たことのある
今どきのセンスのない少し毛羽立ったスーツを指さして笑った。
その子を始めとしてみんな素敵なスーツを着ているけど
その子のスーツは群を抜いていた。
長い髪の毛は二つに縛ってピンク色のリボンで結んでいる。
私はここに来て長かった髪を切っておかっぱにされた。
もう母がこの髪の毛を束ねてくれることはないから……
『幸の髪の毛は薄い栗毛色…光にあたると色が変化して……本当にキレイ ……。』
髪の毛を優しくブラシして母はいつもそうやってほめてくれた。
今はまっすぐに切りそろえられたおかっぱ
もし両親が生きてたら
そう思うと自分の姿を上から下まで確認した。
………。
「ピンクのランドセルは似合わないよね~」
バカにした顔が憎らしかった。
親がいたらあんたにだって負けてないわ。
そう言ってやりたい気持ちをこらえた。
どうしてこの子がランドセルにこだわるのかは
教室に入ってわかった。
この子の席の脇にかかっているのも
ピンク色のランドセルだった。
同じだからムカついたのかな……
板垣 凛
これから私の人生に大きくかかわってくる彼女と初めて出会った
入学式の日……。
嫌な奴……
凛はふり向いて私を見た。
「あんたと同じランドセルなんて……
華子だって嫌がるわ。」
華子?
「もう最悪~~こんな子と一緒なんて……」
凛はそう言うと私の前の席に座った。
私だって同じだよ。
同じ色のランドセル………。