プライド~三十四話~
「華子のおかげでこんなに帰るの遅くなった。」
睦月が怒りながら入ってきた。
「おかえりなさい。」
私たちは口を揃えて言った。
「ごめんなさいね……。
すっかり遅くなってしまって……。
華子と待ち合わせしてたら もう全然来なくて……
あら?もう夕飯の用意なの?」
叔母がセッティングされているテーブルを見て
不思議そうに言った。
「よぅ!!睦月!!」
元気な声にみんながふり向くと
圭さんがにこやかに微笑んで立っていた。
「圭くん!!!」
普段は顔付きを変えない睦月がビックリしている。
「大きくなったな~」
睦月を高く抱き上げて
「もう…抱くのは限界だな~」と言った。
「圭!!どうしたの突然!!」叔母も驚いている。
「圭くん!?」華子が圭さんに気づいて大きな声をあげた。
「よ…わがままおじょうさまの登場だな。」
「あ…嘘…圭くん…」華子は感動しているのか声が震えていた。
「両親を心配させてたんだってな。」
華子は圭さんの胸の中に飛び込んだ。
「だって…圭くんがまた遠いとこに行くって言うから……
また会えないから…どうしたの?突然でビックリした。」
「華子と睦月に会いに来た。
またしばらく会えないから いい子にしてるように言いに来たよ。」
圭さんは華子の頭を優しく撫ぜた。
私は思わず嫉妬のような気持ちに
なっている自分に驚いた。
「もう子供扱いしないでよ。」
「俺にとってはおまえらはいつもかわいい妹と弟だからな。」
「妹なんかじゃないもん……」華子が圭をにらみつけた。
「圭!!どうしたんだ!?」
叔父の嬉しそうな声にまた驚いた。
圭さんは華子から離れて叔父の方に向かった。
「ご無沙汰してます義兄さん。」
「また男前になったんじゃないのか?」
眩しそうに目を細める。
この人でもこんな顔するんだ……。
「明日発つから そのまえにみんなの顔見に急きょ寄りました。」
「おう!!そうかそうか~~
シノさん お酒持ってきてくれ~成人したし堂々と飲めるな。」
「する前でも飲めましたけどね。」
叔父は圭さんの肩を抱いてダイニングに座らせた。
「お食事も運びますね。」シノさんの合図に私も料理を運んだ。
華子はすかさず圭の隣にひっついて座った。
叔父と圭さんは学校の話や勉強の話に盛り上がり
叔父はとても上機嫌だった。
圭さんを囲んでこの家の住人がみな優しい表情になっている。
「急なことで忙しい思いさせたわね。
どうもありがとう。」
叔母がキッチンに来て頭を下げた。
「いえいえ私たちも圭さんに会えてうれしいですよ。
本当に四年会わないだけであんなに大人になられて
奥さまも少し安心されたんじゃないですか?」
「見た目は変わってもね…あの子はいつまでも子供にしか見えないわ。
こうやって急に来たりするとこも…あの子には
ビックリさせられっぱなしで…全く何を考えてるのか……」
そう言いながらも叔母は嬉しそうだった。
圭さんっていう人の存在が
ここの家の太陽だって知った。
華子は圭さんにしがみついて離れない。
うらやましいなって思った。
私ももっと圭さんと話したい…そう思った。