プライド~三十三話~
「あの圭さんが帰ってきて お部屋にいるけど…」
買いものから帰ってきた二人に伝えた。
「え~~夕方って言ってたのに~」
そうパニくると
圭さんの部屋のドアをノックした。
「圭さん 早かったんですね。
夕方って聞いてたから。」
出てきた圭さんにシノがそう言った。
「あらら?ちょっと…やだわ……。
圭さんったらすっかり変わってしまって……
五年って……やっぱり長いんですね。」
「高校行って背伸びたからね。
シノさんもナオさんも相変わらずお若くて~」
圭さんの声は笑っている。
「いやですね~そんな社交辞令言えるようになって~」
そう言いながらうれしそうな二人
「いつまで?」
「明日の夜の便で行こうと思って
忙しい思いさせるけどよろしく頼むね。」
声だけでも充分に癒される。
戻ってきた二人が張り切りだした。
私はそんな二人のそばで
忙しく手伝いをしていた。
ここに来てこう言う毎日を送って
動くコツも覚えた。
シノさんやナオさんの性格や仕事の流れも
体で覚えていた。
「幸ちゃんはもうお嫁にいってもだいじょうぶね。」
ナオさんに言われてうれしかった。
そうだお嫁さんになれば
ここから解放されるんだ……。
「幸ちゃん よく働くね。
華子や凛とは全然違うや。」
圭さんが突然あらわれて驚いた。
「いつもこうやって手伝っているのかい?」
「ここにおいてもらっている恩返しをするように
叔父さまに言われました。」
思わず口にしたのは圭さんが
叔父を尊敬している様子だったから
「そうか……
でもそうやって頑張ってる姿はとってもいいよ。
損のことは何にもないからね。
家事のプロにいろいろ教わって
幸ちゃんはいいお嫁さんになれるよ。」
思わず口にしたことを恥じた。
そういう考え方もある
いや…今は
ここで生きていくしか手がないんだから
前向きに受け入れて暮らすしかない
そう圭さんに言われた気がした。
夕飯のスタンバイが終わって
後はみんなが戻ってくるのを待つだけになった。
三人で休憩室に上がってテレビを見たり
ジュースをのんでいると
「戻られたわ。」ナオさんが立ち上がった。
「これから大変よ・・・・・。」
シノさんがエプロンを締め直した。