呪い~三話
そこらへんからの記憶は 私の中で混乱していた。
きっと幼い頭の中で必死で両親の死と環境の変化を
受け入れようと必死だったのかもしれない。
身よりのない私は なぜかこの札幌という街の
『ライラック園』という施設にうつってきた。
寒いこの街は私を一層 絶望感に追いやる。
両親と一緒に見たのなら感動的な白い雪も私は好きになれなかった。
真っ白に覆われた厳しい世界が
全ての愛を失くした私にとっての色みたいで嫌いだった。
園の子たちが園庭で雪合戦をしてるけど
私は寒いを盾にして外に出かけることもなかった。
あまりのショックに心を閉ざした4歳の私
それから園でまた白い世界を見た。
それでも私は冬を少しも好きだとか雪がキレイだとか思わなかった。
どんどんと嫌いになる冬
園の子たちは私より年上か
年下か…
口数少ない私をかまう人は誰もいなかった。
「さっちゃん…春から小学生なのよ。
お友達を作るには 笑顔と元気が必要よ。」
先生が心配してそう言ったけど
笑えるか……
元気でいられるか……
持つのは反発ばかり 自分がどうしてこんなことになってるのか
まだまだ受け入れられない……。
楽しかった幼稚園
いつもみんなの中心にいて友達がたくさんいて
園バスから降りたらうちで遊ぶ。
キレイな花が咲く庭の一角にあるイスとテーブルで
友達と絵を描いたり 母お手製のおやつを振るまったり
毎日笑っていたのに……
ここにはあの暖かい家も 庭も あの花も……
そして両親もいないんだ。
白い雪を見るたびに自分の運命を呪った。
呪いの言葉を思い出す。
傷は痛まないのに……太ももについた赤みのとれないみみずばれの五本の線
私からすべての幸せを奪うって……
こういうこと?
私が何を悪いことしたの?
なんであの人はそんなこと言ったんだろう……。
園長先生に呼ばれた。
「さっちゃんにプレゼントが届いてますよ。」
何…また使い古しの善意の品物?
上の子たちが小学校に上がる時も善意の品物が届いた。
じゃんけんをして買った人から
一番手のいいランドセルをゲットする。
私にプレゼントなんかしてくれる人なんていないじゃん
乱暴に包装紙を破って
その箱からピンク色のランドセルをとりだした。
「ピンクのランドセル……。」
私が驚いていると園長先生が言った。
「これで学校が楽しみになりますよ。」
うれしかった。
新品のランドセル それも赤じゃなくてピンク色
誰がくれたんだろう
一瞬そう思ったけど プレゼントの興奮で
ひさしぶりに私は素直に笑えた。
ピンク色のランドセルは私の宝物で友達になった。