折れる心~二十六話~
キッチンからシノが指示したものを皿に入れていた。
「やっとご飯なのね。
お腹もグーグー鳴ってたしよかったね。」
凛のバカにした言葉にムッときた。
「それも余ったものばっかりで~」
そうだった。
さっき作った唐揚げはめちゃめちゃ美味しそうだったのに
私の皿には 唐揚げがなかった。
凛がたくさん食べちゃったから……
ここにのってるのは余りものだけ……
そう思うと一生懸命作っても あっという間に食べて終わる
わりのあわない仕事を
世の奥さんたちはしてる。
「幸ちゃん 早くいきなさい。」
凛の攻撃をさけようと シノさんがエレベーターを指さした。
「ちょっと待って
幸って部屋どこなの?」凛が聞いてきた。
「三階の休憩室の隣の部屋です。」
シノが答えた。
「三階?圭くんと同じとこ?」
「圭さんの隣の部屋ですよ。」
「おじさま圭くんの隣の部屋ってずるいわ。
華子は知ってるの?」
「圭くんは幸を相手になんかしないわよ。
だって幸は別にお手伝いさんみたいなものだもん。」
「それはそうだけど……。」
凛は不服そうだった。
「どっちにしても圭くんの部屋には絶対入れないし
おとうさま意地悪だから私たちは絶対ダメだっていうの。」
「くれぐれも言われたんだ。
おまえたちに部屋ん中かってに入れないでって約束させられた。
もし守ってくれないならここには戻らないって。」
「え~~~そうなの?」
「凛ちゃんが勝手にいろいろ見たから
あの時だってめっちゃ怒ったでしょ。
あんな圭くん初めてだったから怖かった。」
「だから絶対入らないでね凛ちゃん。」
華子の目はもう座っている。
「うちにだって圭くんの部屋あるんだし~
別にここにこだわらなくてもいいんだけどね。」
凛がそう言うと
「そういうことやったら絶対許さないから
圭くんはうちの家族だからね、」
普段あまり何事にも無関心っぽい華子は
圭のことになると人が変わってしまう。
「ほら冷めちゃうわよ。」
シノにいわれて慌ててエレベーターに乗り込む。
一人で休憩室でご飯を食べた。
誰と話すこともなくて
これならまだ園にいた時の方がよかった。
期待してきたからこんなにガッカリしてしまうんだ。
「唐揚げ食べたかったな。」
私は野菜ばかりの皿の上にため息をついた。
あまり好きじゃないけど食べるしかない……。
華子たちの楽しい食卓とは差がありすぎて
孤独をかみしめた。
一人ぼっちなんだ……
もう期待するのはやめよう……
板垣家に憎しみが芽生えた。
いつかきっとお礼してやるから……
口一杯に生野菜をつめこんだ。
負けるもんか………
いつかきっと頑張ってたら王子さまが
迎えに来てくれる。
「頑張ったね。」そう言ってくれるから……。




