折れる心~二十五話~
涙をこらえながらテーブルのセッティングを終わらせた。
四枚の色違いのランチマットに
バカ凛のマットと
そこに私の分はなかった。
家族として受け入れてもらえると思いこんでいた。
最初はぎこちなくても
こうして一緒に食事をとったりしてるうちに
溶け込めると信じていた。
このダイニングに私の場所はない。
みなが揃いだして 食事が始まった。
華子が圭くんと言う人の話題に触れる。
「おかあさま 圭くんはまた素敵になっていたね。
どんどん背が伸びて……華子も早く大人になりたいな。」
「私もおどろいたわ。
圭はすっかり変わってしまってて
この間までまだ男の子?って感じだったのに…
なんだか衝撃受けちゃって……。」
優しい顔の叔母
「圭は成長期が遅かったからな。男らしくなったな。
私も驚いたよ。
毎回どんどん変わって行く。
楽しみだな。早く圭をこっちに呼びよせて
一緒に働きたいな…私の肩腕として楽しみだ。」
優しい顔で笑った。
叔父もあんな顔をするんだ。
「彼女とか…そんな感じはしなかった?」凛が言うと
「しない!!絶対ダメだからって約束してきた。
圭くんに彼女ができたら死ぬからって!!」
華子は圭くんのことになると
めちゃめちゃ感情的になるんだ。
「死ぬって~~だって圭くんは華子の叔父さまなのよ。
どんなに頑張ったって結婚できないのにバカみたい。」
凛が言った言葉に華子が立ち上がって
凛の頭を思いっきり拳で叩いた。
「いた~~い!!」凛が叫んだ。
「今度そのバカな言葉言ったら もう絶対家に入れないから。」
華子の目がすわっていて怖くなった。
圭くんは華子の叔父なんだってことは
叔母の弟になるんだ。
「も~~最悪なんだけど~~
今日はそこの拾い食いしそうな奴にも叩かれたし~」
拾い食い・・・?
またムカムカしてきた。
「とにかくくだらないこと言ったら
圭くん帰ってきても絶対にいれてやんない。」
「おばさま~うちにだって圭くんの部屋作ったんだから
うちに来るように言って~
パパも圭くんだったら喜んでって言ってたし。」
叔母は睦月の口にミニトマトを運んで
「ありがとうね。
まったく圭のどこがそんなにいいのかな~
ね?あなた?」
叔母の存在はここでは天使に見える。
「あはは~私にとっても弟みたいなもんだからな。
顔付きは成長してもまだまだ子供にしか思えない。
圭にはうちの会社を将来背負って貰いたい。
そのためには今はしばらく勉強してもらおう。
まだまだこっちには帰って来ないぞ。」
叔父が高笑いをしている。
「え~~~」
華子と凛はバタバタと足を動かした。
「大学卒業まであと何年待つの?
まだ圭くん高校生なんだから~~
だから札幌の高校に行かせたらよかったんだよ。」
華子が口を尖らせた。
「圭がやりたいことをやらせたい
私は圭を愛してるからな。
華子や睦月と同じくらいな~」
そう言うと信じられないくらい優しい顔で
叔母を見つめる。
この人こんな顔するんだ
冷たい顔の叔父は叔母を見る時の目が
とても優しいことに気がついた。
「ありがと 感謝してるわ。」
叔母は笑顔でそう答えた。
楽しい家族団欒を私は ただ横目で見ている。
お茶を入れたり お水を入れたり
なんでこんなことしてるんだろ
お腹すいた・・・・・・。
ご馳走を見ていたらお腹がグーッと鳴った。
その音に気付いた凛がまたバカにしたように笑う。
バカ お腹!!
恥ずかしくて情けなくて……この場から早く立ち去りたい気持ちだった。