折れる心~二十三話~
「幸ちゃん 手伝って。」
シノに呼ばれて私は奥の部屋に入った。
「そこのクローゼットからパジャマ出しておいて。」
私はクローゼットをあけて怪獣のたくさんついた
小さいパジャマを出した。
「おぼっちゃまも気むずかしいから
気をつけて接してちょうだいね。
多分このパジャマも……」
少ししたら 叔父が睦月を抱きかかえて部屋にやってきた。
シノさんがパジャマを持って行くと
睦月が首を振った。
「それでしたらこれは?
じゃあこれは?」
次々と見せては 睦月は首を振る。
叔父はため息をついてその様子を見ていたが
私の方を見て
「シノさん これからは睦月のことは幸にやってもらうか。」
と言った。
私は驚いて叔父を見た。
「そうですね その方がいいですね。
おぼっちゃまもお友達が必要ですから。」
めんどうなものを押し付けたい必死さが感じられた。
「それじゃあ幸 頼むよ。
細々としたことは シノさんに聞いてくれ。」
本当に冷たい目をしている。
パパと似てるけど……パパはもっと優しい顔をしていた。
目尻のしわも叔父にはなかった。
叔父はそう言うと部屋を出ていった。
「とりあえずぼっちゃまにパジャマを着せたら
少し休んでいただいて 幸ちゃんはキッチンに来てちょうだい。」
そう言うとシノも出ていってしまった。
私は一人取り残されて睦月と目が合った。
「あ……パジャマ何がいいの?
自分で選べばいいじゃない?」
睦月はあっちを向いている。
「じゃあ これなんて可愛いじゃん?」
さっきの怪獣パジャマを差し出すと手で払った。
「どうするの?じゃあこれ?」
シノが出さなかったパジャマを出して私は言った。
結局どのパジャマにも首を縦に振らない。
私は頭に来たから睦月の洋服を乱暴に
脱がして シャツとパンツだけにした。
園では小さい子の世話をしていたからこんなことは
朝飯前だったけど
ここまで可愛くない子はいなかった。
睦月は
「やめろや バーカ!!」と抵抗した
「どれ着るの?」
睦月はまたあっちを見ていたから
私はパジャマをすべてクローゼットにしまった。
時折何をする気だと睦月が見ていたけど
構わずに全てたたんでしまって ベットには何もなくなった。
「あんたみたいな子 可愛いパジャマもいらないから
その白いシャツパンでいたらいいんだわ。
とてもお似合いよ~おぼっちゃま~
その 白い シャツパン姿~」
わざとにシャツパンを強調してやった。
「バカ バカ バカ」睦月が叫んだ。
知らないもん……
「これからパジャマなんか着ないでそのダサイ格好でいいんじゃない?」
睦月はやっぱり子供だから
私が言えば言うだけ言葉に反応した。
そして少しフラフラしながら一人でクローゼットに入って
パジャマを無造作にとりだした。
「ダメだよ あんたにはその姿が一番いいって~
なんでパジャマなんて着るの?」
少しイライラしていたからついつい睦月にぶつけていた。
「うるせーブス!!」
「そのパジャマ最初にやだっていったよね?」
睦月はベットに入るとそのパジャマを時間をかけて
着出した。
「自分で着たことないの?」
睦月は恐ろしくうまくボタンが閉められなかった。
「自分でした方がいいよ。すぐにうまくなるから。」
私が言うと睦月はまたボタンつけを始めた。
「これはね……こうやると…ほら・・・・
ここの穴からボタンがこんにちわって…出てくるよ。」
ぼたんを一つつけてやって
「こんにちわ」と大きな声で言うと
睦月が笑った。
「ね?ここのボタン穴から こんにちわってだしてあげたら
ほら…うまくできるでしょ?」
園の子たちのお世話の時 ここのこんにちわを
大げさに言うと小さい子たちは喜んだ。
さっきまで生意気だった睦月が 笑ったのがうれしかった。