折れる心~二十二話~
「え・・・・・。」
凛が私を見て固まった。
「なんでここにいるの?」
確かにそう思うだろう。
「同じ学校だったから知っているだろう。
幸は今日からうちで暮らすことになった。」
叔父が言うと
「なんで?叔父様?」凛が私を見たままそう聞いた。
「幸は私の弟の娘なんだ。」
「え?叔父様の弟?
パパからも聞いてないよ。
叔父様 一人っ子じゃなかったの?」
「おとうさまは 双子なんですって。
私も初めて知ったの。幸と私はいとこってことになるわ。
凛がうるさいから内緒にしていたの。」華子が言うと
「なんでも内緒にして!!圭くんに会いに行くなら教えてくれればいいじゃない。」
凛が華子の背中を叩いた。
「凛 やめなさい。」
叔父が厳しい声で言った。
「だって…私だって圭くんにあいたかったんだもん。」
凛は泣き顔になった。
「悪かったな。洋介から凛は塾の試験があると聞いていたから
あえて誘わなかったんだ。」
「パパ 余計なこと言って……
圭くん全然帰って来ないから 会いたかったのに……。」
泣き声に変わる。
「元気だったよ。また背が伸びてめちゃめちゃカッコいいの~。
たくさん甘えちゃったよ。」
華子が挑発するようにいったからまた凛が怒りだした。
「凛ちゃん 今度は必ず一緒に連れて行くから…
ごめんなさいね。圭には電話するようにいっとくから。」
後から現れたキレイなおばさんが優しい声で言った。
「おかあさま~そんなこと言わないでよ。」
華子がつかみかかった。
おかあさま……
この人は 華子のおかあさんなんだ。
「おばさま 絶対に約束だよ。
今日でも電話してって言ってね。」凛はすっかり機嫌を直していた。
「わかったわ。」
叔母は美しい笑顔でそう言った。
「あなた・・・睦月が起きたわ。
手を貸して……。シノさん 睦月のベットお願いね。」
「わかりました。」
シノが慌てて 階段を駆け上がった。
私はどうしたらいいのか困っていると
叔母が近づいてきて
「幸・・・?」と聞いた。
「はい……。角谷 幸 です。
よろしくお願いします。」私は慌てて頭を下げた。
「一生懸命 勉強して 働いてね。」優しい笑顔にホッとした。
叔父は苦手だけど 叔母は好きに慣れそうだと思った。
叔父が男の子を抱いて入ってきた。
男の子はとても冷たい目をしていた。
にこりとも笑わない。
そして私をジッと見つめた。
「さっき話したね。いとこの幸だよ。」
叔父が言うと また男の子は私をジッと見た。
「幸です。よろしく。」
冷たい目にドキドキした。
叔父は私の横を通り過ぎて 叔母と一緒にエレベーターに乗り込んだ。
凛と華子はまだもめている。
「圭くんから電話もらえるなんて楽しみだ~
いっぱい大好きって言うんだ。」凛が言った。
今度は華子が怒りだした。
「電話なんかさせないもん。」
「華子は血が繋がってるから結婚できないんだから。
私はパパに頼んで 絶対圭くんのお嫁さんになるんだもん。」
凛の言葉に 華子がとうとう発狂して
凛の髪の毛を引っ張った。
「そんなことしたら…殺すから凛……」
華子の目も冷たい目で 私はぞっとした。
圭くんって…どんな人なんだろう
興味が湧いた。