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折れる心~十九話~

新しい素晴らしい家だった。



「すごい……。」


今日からここが私の家

そう思うと期待感でいっぱいになった。



運転手が家の中からおばさんを連れてきた。


  この人がここの……



太ってエプロンがはちきれそうなおばさんが立っていた。



緊張でドキドキしてきた。

おばさんは私を上から下までジロジロと見た。



イヤな感じだった。




「この人はここのお手伝いのシノさんです。

わからないことは何でも聞くといいよ。」



「小林 篠といいます、よろしくお願いします。」


大きな体のおばさんが体を丸くして頭をさげたから


私は頭をさげた。



「まずは自分の名前を言ってから よろしくおねがいします

それが初対面の挨拶よ。」 



すかさずシノにそう言われて私はタジタジになった。



「角谷 幸 です。

よろしくおねがいします、」


なんとか声を出して挨拶をした。



「旦那さまや奥さまがおかえりになったら

そうやってきちんと挨拶をしなさいね。」



  なんなのこのおばさん……



「今日から私が幸ちゃんの教育係ですからね。

荷物を持って入りなさい。」



そう言うと玄関のドアを開けて

私を中に入れた。



想像していた展開ではなくて私は拍子抜けしていた。


なんでこのおばさんにこんないい方されんのか

わからなかった。

お手伝いさんって ここの家の人じゃないし

えらそうですぐに嫌いになった。




大きな玄関ホールだった。



  すごい・・・・


「ついてきて。」シノの後をついて歩いた。




ホールを抜けるとエレベーターがついていた。


  家の中にエレベーターだって……



「ここのお宅は先月完成したばかりなのよ。

私は昔からずっとここのお宅に通いできているの。

本当に素晴らしいお家でしょう……。

旦那様は立派な方ですから……さ……まずはあなたのお部屋に案内するわ。」


エレベーターを上がって三階が開いた。



また少し広いホールがあって


「こっちがバルコニー おもに洗濯物を干したり

休日はご家族が焼き肉をしたり

お子様たちが遊んだりする予定。今はまだ雪があるけど。」


シノがバルコニーの入り口のドアを開くと私は思わず声をあげた。


まだ白い雪をかぶった山々が見えて

バルコニーはとても広かった。



「すごいでしょ。ホントこんな贅沢ができるのも

旦那様がご立派な方だから…お若いのに本当に……。」



シノは絶賛していた。


  パパと双子のおじさん




バルコニーの入り口の向かいには部屋のドアがなんこかあった。



「ここが私たちの休憩室。私の他にもう一人お手伝いがいるの。

こんなひろいお家だから…今回旦那様がもう一人雇ってくれて…。

どっちかがお休みの日は一人だから 幸ちゃんにもお手伝いしてもらうわよ。」



  え?お手伝い?



洗面所にトイレもあって

そこにはソファーとテレビがあった。

小上がりの畳もあった。



「ここで幸ちゃんは顔を洗ったりトイレを使ってね。

くれぐれも下を使わないようにしてね。」



シノの言葉が少しづつおかしいなって思い始めた。




その隣のドアを開けると



「ここがあなたの部屋よ。」



机とベットとクローゼットがあった。



「ここ?」一人部屋が嬉しかった。



私がウロウロしていると 


「ここにインターフォンがあるから

私たちが帰った後 ご家族の方からの連絡がここに来るから

お手伝いをしてね。私たちはシフト制で七時と八時には帰るから

その後の雑用は幸ちゃんの仕事だから。」



「仕事?」



「そうよ。あなたはここに住まわせてもらうのよ。

それなら何かを返すべきでしょ。

だからご家族のためにお手伝いを一生懸命しなくちゃね。

ここで学校も勉強も衣食住全部 していただくんだから

感謝しないといけません。」



まだ小学生の頭には難しかった。



  お手伝いをしないさい


それが言いたいのかと思った。

それはしかたがないことだし……ママにもよく言われていた。



「お手伝いして」


私は一緒にキッチンに立つのがうれしかった。



その時は お手伝いの意味をそう深く考えてはいなかった。

ただ素晴らしい家に自分の部屋がある……



そして家族ができる


まだその希望を持っていたから……

ここでの生活を楽しみにしていたんだ。



本当の地獄は……今日から始まった。






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