幸せのティアラ~189話~
頂上についたら ベンチコートを貸してくれた。
もうすぐ夏は近いというのに山の頂上はひんやり寒い。
山の上にカフェがある。
「何?ここすごい。」
嬉しくて 私はピョンピョン跳ねた。
いい年をしてって思うけど だってこの別世界を見て 跳ねない方がおかしい。
「行こう。」
睦月に手をとられて ドキドキしたけど
そのまま 一緒について行った。
「やった・・・・。」睦月の声に下界を見渡すと美しい雲の海が広がっている。
「あ・・・・すごい・・・・すごいよ・・・・。」
言葉を失って 涙が流れた。
こんな美しい世界があったんだ。
「幸に見せたかったんだ。すごいだろう。」
「あ・・・本当に・・・幻想的な・・・・雲がいきものに見えるわ。
ここは別世界だね。」
「なんかどうしてかな。
涙が・・・・・。なんか私の生きてきた人生なんてちっぽけな・・・・・。」
オレンジ色に染まった太陽が雲海の下から出てきた。
雲海はオレンジ色に染まる。
「いろんな風景がこれから広がるよ。
しばらくこうして見て行こう・・・・・。」
睦月が私の肩を抱いた。
時間ごとにいろんな形を見せる雲・・・・・・。
なんて大きな世界なんだろう。
「これ見れないことも多いんだよ。
幸はついてるよ。きっと圭くんが 見せてくれたんだ。」
「え?」
「ずっと圭くんにお願いしたんだ。
最高の雲海を 幸に見せてあげてほしいって・・・・。」
「そう。ありがとう。」
感動の涙は何度も流れて 私はその感動を睦月と共有していた。
「睦月 見て。」
「きれいだな。」
山頂は次から次へと人があがってきて 感嘆の声があがっている。
「連れてきてくれてありがとう。」
「また 来ようよ。」
「うん また来たい。」
「一緒に?」睦月の肩を抱く力がこもった。
私は涙で曇った目で 睦月を見つめた。
睦月は私を見つめる。
「一緒に・・・・また一緒に感動したい・・・・。」
「俺と・・・一緒に?」
「睦月と一緒に・・・・・。」
「それって・・・・俺と結婚してくれるってこと?」
涙がすーっと流れ落ちた。
「幸せになっていい?」
睦月に抱きしめられた。
「もちろんだよ。俺が幸を幸せにするから。」
「私は睦月を幸せにできる?」
「幸がいれば・・・・いい。
俺は親父のように・・・・幸を愛していきたい。
だから圭くんのこと 忘れろって言わない・・・・・。
全部ひっくるめて 幸を愛してきた。」
嬉しかった。
圭を忘れなくていい そう言ってくれる睦月の器の大きさが・・・・・・。
「圭がね 夢の中で喜んでいたの。
幸が幸せになるって・・・・。睦月を・・・・
愛し始めてるって・・・・・・。」
睦月から嗚咽が聞こえてきた。
「睦月・・・・私をお嫁さんにしてください。」
私の新しい人生が始まった時 雲海の切れ間から美しい山並みが浮かび上がった。