涙色ティアラ~183話~
「圭しか…愛せないよ……。」
「わかってるって。今までだってあきらめてたから。
だけど…約束したんだ男と男の約束だって。
あの日 圭くんをバタクソに殴って そして語って……俺は
まともに生きようって決めたんだ。」
「殴った?」私は驚いた。
「幸と別れたから……。なんで幸を選らばなかったんだって。
睦月は恵まれて生きているから 自由に生きられてうらやましいなって言った。
よくわかんなかった。
俺なら家族なんて捨てて 幸を選ぶのに
何もしてやれない自分が情けなくて……圭くんが
睦月が幸に恋してるの ずっと前から知ってたぞってさ。
見え見えだったんだな。参ったよ。」
睦月が私を好きだなんて思ってもいなかった。
確かに姉というように甘えていたという気はしていたけど
「幸が圭くんを好きなこともわかってたし 何より大好きな圭くんが
幸を愛してることも二人がそうなるだろう前から知ってた。
圭くんだったから切なかった。絶対に越えられない憧れの人だった。
嫌いになりたいのに なれなくて…
辛かったな……。」
睦月の力が少しだけ弱くなって私は力が抜けた。
「幸・・・・俺を愛してとは言わないよ。
だけどここにいて 圭くんが恐れていたことだけは しないで。
そんな人生なら幸には悲しすぎる。
言ったはずだよ 圭くんは
死にたくない もっと生きたい って。違うか?」
そう圭はそう言った……。
死にたくない 死にたくない
「それなのにそんな圭くんの想いを冒涜する 一番の裏切りかたを
今 幸がしようとしてる。
死んだって絶対に一緒になんかなれない。
そんなの生きてる人間の勝手な思い込みだよ。
圭くんの分まで 生きろよ。俺は言ったよ 圭くんに。
これからは圭くんの分まで 頑張って生きてくからって。
そしたら圭くん 泣いたよ。ありがとうありがとうって。
圭くんが 幸に後追いを望んでると思うか?」
子供だと思っていた睦月が 初めて頼もしく見えた。
「違うか?幸?圭くんは生きてくれって言っただろ?
そう伝わってるはずだよ。」
そうだよ。そう・・・・・。
圭は自分が死んだあとのことを必死に心配してた。
私がちゃんと前を向けるかを・・・・。
「これから生きてきてさ また幸はきっと幸せになるよ。
それが俺じゃなくて 他の人だったって 生きているからできることだろ?
俺らはいとこ同士だし もし俺を愛してくれることがなくても
違う意味で幸を支えることはできるから。
板垣は 幸にひどいことをしてきた。
これからはそのつぐないをしていくと親父が言った。
もう…幸はひとりぼっちじゃないんだぞ。」
もうひとりぼっちじゃない?
その言葉が心を温かくしていった。
「圭くんが自分の命が尽きる前にって それを必死に願って託したんだ。
幸が簡単には板垣を受け入れることはできないのはあたりまえだけど
だけどもう あの時みたいな孤独な思いはさせない。」
「ひとりぼっちじゃないの?」
「支えてくれって圭くんが言い残してる。
幸を頼むって・・・・みんなにそう言い残した。
圭くんは 幸をこんなに生きて行く環境を整えていたのに・・・
裏切るなよ幸・・・・。」
睦月は最後の言葉を言えずに 泣きだした。
「死ぬな もう頼むからそんなこと考えるな。」
睦月の泣き顔が 愛おしく思えた。
変わり者だったな睦月って・・・・。
だけど圭にだけは 素直だった。
パンツが気にいらないって 駄々こねて・・・・
不思議と睦月だけには 違う感情を持ってた。
そっか・・・・・生きろって 圭は 願ってる・・・・・。
生きて 生きて 頑張ってる私を 圭はみたいと思っている。
そしていつかまた時を越えた時 圭はきっと私を見つけてくれる・・・・。
「心残りだったの。」
「ん?」
私は睦月のぐちゃぐちゃな顔をティッシュで拭いた。
「雪をみたいなって…思った。」
睦月はまた私を抱きしめる。
「じゃあ 雪 見ようよ。」
温かい胸・・・・・。
圭以外の胸が こんなにも温かいなんて知らなかった。
「雪見るまで 頑張ってみるかな・・・・。」と私は言った。
「バカ・・・・これからもずっと頑張るんだろ?」
「ありがと 睦月・・・・・・。睦月がいなかったら 今頃
まだ冷たい暗い海の前で 座っていたと思う。
死ぬのが怖いって・・・戦ってたと思う・・・・・。」
「自分で自分の命を奪うなんて・・・・恐ろしいことだよ。
幸にはそんなことはできないよ。だって死と戦った圭くんを身近で見てきたんだ。
生きたい 死にたくない そう言い残して心を幸に残したんだ。」
涙が静かに流れた・・・・・。
睦月に抱きしめられて 後から圭が抱きしめくれてるかのように
私の体は温かくなってきた。
「圭が 後から抱きしめてくれてる・・・・。」
睦月が離れようとしたから
私は思わず背中を抱きしめた。
「圭と睦月に・・・・温めてもらってる・・・・。」
心地よさにいつしか目を閉じる。
生きよう・・・・・生きてみよう・・・・・。
命が尽きる日まで 圭の分も・・・・・きっとその日がきたら
よく頑張ったなって またきっと
ティアラをかぶせてくれるかもしれない・・・・・。
生きる 生きる 私は生きる・・・・・。