涙色ティアラ~181話~
「泣いたの?」華子が私の手をとった。
「泣いた・・・・もう出ないと思ってたのに…泣いた・・・・・。
そしたらすっごくスッキリしたの。
圭と話しができたようで・・・・・・。
ご心配かけてごめんなさい。大丈夫です。
私なら ちゃんと答えは出たので…もう大丈夫です。
これからは後悔しない答えに向かって生きるだけです。」
おじとおばに挨拶をした。
「よかった。幸はまだ若いんだから 圭も心配していた。
幸せになりなさいって。それが供養だよ。」
おじが言った。
「大丈夫です。今日向こうに戻ります。」
「帰ってくるでしょう?」
「少し考えてみます。ありがとうございます。」
私は初めてこの家の食卓で 食事をした。
圭の遺影が笑ってる。
家族として迎えられたね やっと・・・・。
板垣の家に対してもっていた 憎悪も今はなつかしい。
睦月が駅まで送ってくれた。
「週末までいてくれたら 車で送るのに。」
「ありがとう 大丈夫だよ。」
「そうだ 圭くんの病院の方の手続き大丈夫か?」
「先生にも看護師さんにも会ってお礼言いたかったから私が行きたいって
お願いしたのよ。大丈夫 もう大丈夫だから 心配しないで。
幸は強いのよ。」
「それは知ってるけどさ。」
睦月が私に対して少し 警戒してるのは気がついている。
だけど それは思いすごしだって 何とか思わせたい。
「強がってるわけじゃないよな。」
「昨日 ほんと泣いたの 涙って枯れることはないのね。
泣いたら楽になったよ。」
「そっか。とにかくこれからは俺だって少しは頼りになるんだぞ。
どんどん連絡よこせよ。」
「睦月にはこれからもお世話になっちゃうよ。
ごめんね。許してね。」
「何言ってんだって。よかった。
俺もやっと幸の役に立つんだな。男は俺だっているんだからおぼえとけよ。」
「はいはい~~。」
睦月の車が なかなか発進しないのを感じていたけど
私はふり向かない 振り向いたら勘のいい睦月にはわかってしまうかもしれない。
ありがと 睦月
いろいろイヤなことに巻きこんじゃうけど・・・・許してね。
私はふり向かない
もう ここには未練はないから・・・・・。
辛かったけど 圭が見つけてくれて私は お姫さまになれた。
圭と愛し合ったあの日々も全部ここにおいておこう。
列車の窓から見える風景も もう二度と見ることはないだろう。
もうこの道を引き返すことはないから
頭に焼き付けて行こう。
ポケットからハンカチを取り出した。
昨日圭の遺骨を黙って少し持ってきてしまった。
これで私たちは永遠に離れない。
圭と一緒に 私たちが最期の時を過ごした 出会いの町へ・・・・・・。
そこに私の答えがある・・・・・。
向こうに戻ってすることは決まっていた。
板垣になるべく迷惑をかけない方法 それは自分の身辺整理だった。
リサイクル業者に頼んで 少ない持ち物も売れるものは全部売って
あとは ゴミとして 分別した。
『迷惑かけてごめんなさい。』
片付いた部屋に置き手紙をした。
それから病院に預けておいた 荷物を取りに行く。
詰所によって お世話になった看護師たちに 抱きしめられた。
また…泣いた・・・・。
それから中庭で 主治医と話をした。
「日高さんから・・・・。」言いかけて私が
「あの日ちゃんと聞いてたんです。病室の外で。
だから先生 大丈夫ですから。」
先生は目を丸くして それから微笑んだ。
「そうですか。じゃあ 治療しにきてくれるってことも聞きましたか?」
「え?」
「あなたが幸せになる治療を僕がするって。」
「あ じゃあそのうち伺います。」
ニッコリ微笑んだ。
「きれいだ・・・・幸さんは本当に美しい・・・。
日高さんがうらやましかったな。こんな素敵な女性に愛されて……。」
「何を言ってるんですか。勝気で卑屈なんですよ。」
「落ち着いたら酒でも飲みませんか?」
「お忙しいのに?」
「幸さんから呼ばれれば 飛んでいきますよ。」
優しい日差しが気持ちよかった。
「先生・・・もう少ししたら海水浴できますね。」
私は眩しい太陽を見上げた。