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出会い~十八話~

「王子さま…私はもうここにはいないけど

きっと園に行って どこで暮らしているか調べてくれるよね。」



あの日のような雪は降っていないけど

あの日のことは今でも鮮明に覚えていた。

だけど……こんなに鮮明なのに

おにいさんの顔だけが思いだせなかった。



でもきっとおにいさんは 私を覚えてくれている



そう信じるしかない。



  家族ができるんだよ……

  パパと双子なんだって……。



もう一人ぼっちじゃない

それが何より嬉しかった。




「幸ちゃんはもっと素直になって気持ちをもっと

人に伝えた方がいいと思うわ。

誤解されやすいところがあるから……

家族には素直に笑顔でお話できたらきっと

可愛がってもらえるわよ。」


園長先生は目を潤ませた。



「可愛がってもらってね。名前通りに幸せにね…さっちゃん…」


先生が私の手をとった。



「あなたは幸せよ。ここには誰にも引き取ってもらえず

社会に出て行く子たちも多いの。

孤独でも前を向いて歩いて行くって……。

その子たちの分まで家族を持てる子には幸せになってほしい。」




「お世話になりました。

優しくしてくれてありがとうございました。」


ここに来て初めてだった。

こんな感情を持ったのは……涙が流れて

ここに来た時の不安な気持ちを思い出して……

それから園長先生や先生たちに優しくしてもらったのを

思いだして私は涙がとまらなかった。



「ありがとうございました。」




ここも私の家族だった……そう思ったら暖かい涙が流れた。




午後に車が迎に来た。




見送る先生や仲間たちに手を振って 私は園を後にした。

王子さまに出会った公園


毎日一番遠くまで歩いた通学路



悶々とした日

凛にいじめられて悔しかった帰り道

友達ができてうれしかった日



私は薄汚れたピンクのランドセルを抱きしめて

これから私を迎えてくれる新しい家族を想像した。



父と双子の叔父



父と同じ顔をしてる人



会うのが楽しみで仕方がない。

父のことをいろいろ聞いてみよう。

どんな男の子だったのかとか……母とはどんな恋をしたのかとか



車は私を新しい家族の元へと運んでいる




きっと幸せになれるって……信じよう……。

そして私を好きになってもらえるように努力しよう……。

だって……もう孤独はイヤだもん。




私は幼い胸に期待を膨らませた。

いきつく先はきっと……幸せの家・・・・・・・。



「こちらですよ。」



車が停まった先は ものすごい大きな家だった。



「うわ……」



目の前に広がる立派な豪邸に目を白黒させていた。




  私の家……



 「よろしくね。」と小さい声でつぶやいた。



その時傷が チクンと痛んで 一瞬にして不安がよぎったけど

私は必死にその不安さを吹き飛ばす。




  負けないもん…

  自分を好きになるんだもん……


                                      

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