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涙色ティアラ~179話~

圭との最後の会話

それが最後の会話なんて思いもしない普通の会話。


「今日は疲れたな~このまま寝たらきっといい夢が見られそうだ。」


「私の花嫁衣装の夢も見てくれる?」


「見るよ 今夜は夢も楽しくなりそうだ。

早く寝なきゃ。」


圭がおどけて 布団を直した。



「おやすみ 幸。」


「おやすみ 圭。」


私は今日の幸せを思い出して満面の笑みだった。


「今日の笑顔は…格別だよ。夢に出てきそうだ。」


「いっぱいいっぱい私の夢を見てね。」


「おやすみ。」


圭は大きなあくびをした。


「あははは・・・・・。」そのあくびがあんまり大きくて

私は爆笑していた。


「幸の笑った顔 早く明日になってまた見たいな。」


圭は目を閉じた。



私は圭が消灯時間前に寝てしまったので 顔を洗ったり寝る準備をしていた。



廊下がバタバタと騒がしくなって

また誰かの容態が急変したんだなって思っていた。


看護師が走ってきた。


それから先のことは 何が何だか今だにわからなかった。




ただ一つの事実は



圭がおはようって言ってくれないこと・・・・。

もう二度と目を開かないこと……


永遠の別れは突然すぎて 私は気持ちの整理もつかないまま

茫然と時を過ごしている。



最後の瞬間 私 笑っていたよね。

それだけが救いだった。


約束を守れたことだけは よかったって思った。



  今日の笑顔は 格別だよ・・・・。



頭の中でまだ 圭の死を受け入れられない私がいる。

だけど棺桶の中で眠る圭は

私の知ってる圭じゃない気がした。




みんなが泣きあかしている中で私だけが まだ何も受け入れられなかった。

まだ涙さえも出ていない。



「幸 大丈夫?」


おばは目がぼっこり腫れていた。


「はい。私のことなら大丈夫です。おばさまは?」


「大丈夫よ。」


「圭 安らかな顔で眠ってるみたいだったわね。

幸のおかげだわ。

苦しまないで出発でじきて良かった・・・・・。」


「あまりにいつも通りだったから私の覚悟が足りなかったみたいです。」



おばが私を抱きしめてくれた。



「圭の変わりに 私が幸を抱きしめてあげるから 

我慢しないで 何でも言ってね。」


「ありがとうございます。」



世界で一番憎かった人の腕の中がここちよかった。

今は 一番愛してる人の大切な人だった。



それはおばも同じこと



何の因果だろう・・・・・。



圭が死を持って 私を救ってくれた気がした。



真っ青な空に 圭の肉体が登って行った。

私はその空をただただ見つめている・・・・・・・。



魂の抜けた 肉体はもう抜け殻になって

骨になった。

私の心の中の 圭は思い出の中にだけにしか生きていない・・・・・。

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