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涙色ティアラ~177話~

「幸・・・・。」睦月の声が 後から聞こえた。



私はあの日と同じ色の 空を見上げていた。



あの日・・・・

圭は 私の花嫁姿に 感動して子供みたいに泣きじゃくっていた。



睦月が何枚も写真を撮ってくれていた。


「ありがとう ありがとう・・・・。

一番思い残した 幸の花嫁姿を見られて……ありがとう。

みんな…俺は…ここに家族として生きてこられて 神様に感謝するよ。」


そう言って一人一人と握手を交わした。


「ありがとう 本当にありがとう・・・・。」


何度も何度も抱き合いながら そうお礼を言った。



最後に


「幸・・・・きれいだよ。俺が今まで見てきた中で

一番きれいだよ。ありがとう…そして…ごめんな。

何もしてあげられないのに……。」


「そんなことない。こんなに私幸せなのよ。」



「すまない……。約束守れなくて。」


「約束なんて…こうやってまた会えたのが約束でしょう?」



私は涙でぐちゃぐちゃの圭を抱きしめた。



みんな涙をこらえて笑顔でいてくれるから

私も必死に笑顔を作った。



「圭がキレイって言ってくれるのが 一番うれしいわ。」



「幸 俺だってキレイだって言いたいんだけど。」睦月が明るく言って

みんなを笑わせた。



「睦月 俺の自慢の妻だぞ。」圭も言った。


「これなら自慢できるよ。」


みんなが声をあげて笑う。



圭も泣き笑いだった。



楽しくて幸せで……そこには もう憎しみも嫉妬も何もない。

優しい時間が流れていた。


みんなの会話を聞きながら 圭は少し目を閉じて



「死にたくないよ・・・・・。」そう言った。



「俺も死なせたくない……。」おじが言った。



「ねえさんのことたのむね。義兄さん。

それから幸のこともどうか……幸が幸せになれる日が

来るまで見守ってやってくれ。」


おじは


「わかってるよ。安心しなさい。」と優しくその落ちくぼんだ頬に

手をやった。


「義兄さんがついていてくれたら

力強いよ…マジで……。幸安心して 一杯甘えろよ。」


私が笑うと 圭も微笑んだ。


「ねえさん・・・・ありがとうな。俺のためにねえさんの

大切な時間を費やしてくれて感謝してるのに

何もできなかったね。ごめんね ねえさん。」


「圭がいるだけで 私は孤独から解放されたの。

一人じゃない 圭がいるんだって・・・・・。

なのにごめんなさい。圭を縛りつけて…許してね。」


「俺 すっごい幸せだよ ねえさん。

愛した人たちに囲まれて ほんと・・・・・。

華子 ごめんな。

華子の気持ち 真剣さ 辛い思いさせたね。

その分 いっぱい幸せになるんだぞ。」


「わかってるって。

これからは幸を 一生の友達とするから大丈夫。」


「睦月・・・・俺がいて おまえに辛い思いさせてたのに

気づいてやれなくてごめんな。

義兄さんは おまえが肩腕になってくれることを望んでる。

そろそろ意地はらずに 戻ってこいよ。

これからおまえの時代なんだからな。」


「わかってるよ。」


「それから睦月 幸とまた出会わせてくれてありがとう。

感謝してるよ。」


「うん。」


「そうだ…凛にもよろしく言ってな。

幸せになってほしいって……。」



大きな深呼吸をして 圭は私を見つめた。


言葉に出さなくても想いはたくさん伝わっているよ。



「圭・・・・少し休んだら?

そんなに一気に話したら 疲れたんじゃない?」


懸命に涙をこらえていた。



私は笑顔で 圭を見送らないといけないから・・・・・。



「空が・・・・真っ青だな。もうすぐ・・・・夏か・・・・・。

よかった みんなに・・・ちゃんと伝えられて……。」



圭はそうつぶやいて目を閉じた。



しばらくみんな黙っていた。そして 圭の寝息が聞こえ出す。


「疲れちゃったみたいね・・・・。」


おばが圭の布団を直して 肩口まで引き上げた。



それから 耐えきれずに みんなでバルコニーに向かって一斉に

涙を流し続けた。



圭の別れの言葉を おのおの噛みしめながら・・・・・

私は真っ青な空を いつまでも眺めていた。



そして今 また私は 同じ色の空を見上げている・・・・・・。





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