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悲しい再会~175話~

「幸・・・・ありがとう。

ねえさんを許してくれて 本当にありがとう。」


みんなを見送って戻って来た私に圭が言った。


「なんかねすごく楽になった。

人を嫌ったり恨んだり憎んでるって 重いことなんだね。

私今 すごく心が晴れている・・・・。

この空のように青く澄んでる……。

こんな人生ならもっと早く送りたかったな。」


私は圭のそばに行って

長いキスをした。


「圭が…いつも私を助けてくれる……。」


「あとは幸が…俺がいなくなっても前を向いてくれることだけ…

それが一番難しいかな?」


「大丈夫よ 幸は強いのよ・・・・・。」



圭を心配させてはいけないから・・・・私は必死に嘘をつく。


「だよな。幸は強い子だよ。

だから魅かれたのかもしれない・・・・。」



圭の唇にはもう潤いすらなくなっている。


私の唇で潤してあげたい・・・・

夢中でキスをする。



「愛してるよ。」


「私も・・・・・・。」


「一晩中 一緒にいて幸を抱きしめて眠る約束は……

守れないかもしれないけど……許してくれるか?」


「やだ。そんなこと言わないで。

頑張って・・・・・。まだまだ一緒にいて・・・・。」


「うんそのつもりなんだけどさ。

なんだか疲れちゃったよ・・・・・。」



そう 無理をしてる圭を見るのも辛かったけど

無理してるのが生きる力になっていいことだって 主治医が言ってた。



「私は頑張ってとしか言えないよ。

それが圭にとってとっても残酷なことであっても

そう言わないと…圭が遠くにいっちゃうもの・・・・・。」


「ごめん そうだよな。

頑張るよ。幸のためにも 約束を叶えるためにも頑張る。」



こけた頬にキスをした。



その夜から 圭の容体が悪くなった。

それでも私が来ると 必死に笑顔を作ってくれた。


「昨日痛かったんだって・・・・?」


「おう・・・だけど今はもうおさまったよ。

不思議だな幸がいると 頑張れるのかな・・・・。」


力ない笑顔が消えそうで抱きしめた。



主治医から 

「よく頑張っています。愛の力に感動してます。

医療に勝るのは 愛の力と気力です。

そろそろ ご家族に連絡は入れておいてください。

幸さん・・・・辛いでしょうけど しっかり支えてあげて下さい。」


そう言われて 圭の最期が近づいていることを覚悟した。


睦月に連絡を取った。



「幸さん 先生からの伝言ですけど。」看護師が給湯室で声をかけてきた。


「泊まってくださいって。」


「完全看護ですよね。いいんですか?」


「そうしてあげてくださいって。簡易ベットと毛布用意してもいいですか?」


「ありがとうございます・・・・。

よかった 帰るに帰れなくて・・・・用意してすぐに戻ってきますから

圭のことお願いしていいですか?」


「はい まかせておいてください。」


看護師はニッコリ微笑んだ。



それから家に戻って 急いで用意してまた 飛んで帰ると

圭は主治医と話をしていた。


「今日から 幸さんここにお泊まりしますよ。」


「え?いいんですか?」


「そのかわり…みんなが覗きにくることはやめてくださいね。」


「あははは・・・そんな体力はもう…あはは・・・」


圭の笑い声をひさしぶりに聞いた。


「ありがとう先生。これで俺 安心できます。」


「いえいえ 幸さんに頑張れ頑張れ応援するために許可するんですよ。」


「そっか・・・まだまだですね。」


二人の笑い声


「先生・・・俺が死んで もし幸が・・・苦しんでたら

俺は幸せだったって幸に 伝えてください。だからこれからは

幸が幸せになりなさいって・・・・・。」


「わかりました。伝えます。」


「俺がどんなに言っても 幸は表面上 大丈夫っていうけど

そうじゃないの・・・・わかってるんです。

だから…すみませんが 幸に先生から伝えて下さい。」


「わかりましたよ。安心して。

ちゃんと前向けるように 治療させてもらいます。」


「は~先生にお願いしたから ホッとした。」



嗚咽を必死にこらえて一番端のバルコニーに向かって吐き出した。



別れが近づいている。

最期の時 笑顔で・・・・・圭を送る・・・・・。


人生で一番の試練を 私はどう演じるべきなのか 真剣に考える時が・・・・・。



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