悲しい再会~173話~
「私 知ってた。
圭くが 早くから幸を見てたこと……。
幸はどんどん綺麗になって……そして何より圭くんと自由に
恋ができるのが許せなかったの。
だけど圭くんは私たちを裏切らないってそう信じたかったから…。」
「私も華子がすごく真剣なのがわかってた。
板垣の家を憎んでた反面 華子の気持ちの切なさはわかった。」
「圭くんを……よろしくお願いします。
辛いだろうけど…幸がいてくれたらきっと圭くんは
最後まで幸せでいられるから……。」
華子が私の手を取って
「私のせいでごめんね・・・・。」と言った。
もう華子のことを憎む気持ちはなかった。
「芹沢さんと…幸せになってもいい?」
「もちろんよ。それが圭の願いでもあるわ。
華子が幸せになること・・・・。そうしてくれたら
私たちも遠慮なく幸せになれるから。」
芹沢という人が
「日高のこと よろしく頼みます。
いい顔してました。今が一番 充実してるって。」
「そうですか。よかった。」
「パパとママも来てるんだけど・・・・。」
現実に戻った。
「先生の話を先に聞きに行って 多分今 病室にいるわ。」
「そう・・・・。緊張するわ。」
「ママはすっかり弱くなったわ。圭の病気は私が悪いんだって…。
人をのろったり 意地悪をしたり・・・・
幸の両親が死んだのだって 自分が呪ってやったからだって 笑いが止まらなかった
そんな私に神様は 罰を与えないで
関係ない圭に・・・・全部ふりかかってるって……
いろんな宗教やったり 占い行ったり……
精神的におかしくなってるみたい……。」
それは 気持ちいいくらいの
おばの現実だった。
私の両親が死んだのも 私が幸せになれなかったのも
おばのせいだ。
板垣を恨むことで私は必死に生きてきたけど
そのおばも すっかり気弱になったんだろうか・・・・・。
「私にも協力させて……両親が幸と向き合えれば 何かがきっと
変わってくれるってそんな気がする。」
華子は私の手を強く握った。
何かが変わってくれる・・・・・・。
深呼吸して圭の病室の前に立った。
意を決し カーテンの向こう側に入って行くと
圭が窓から 海を見ていた。
「圭・・・・どうしたの?」
「幸……。やっと来た……。」安心したように微笑む。
私は圭の体を支えながら ベットに座らせた。
「幸が不安がっているんじゃないかって……。」
「華子に会ったの。
握手してきたよ。お互いに幸せになろうって…。」
「そっか よかった。やっと華子も幸せになれるな。」
「芹沢さん優しそうな人だったよ。」
「いい人なんだ。きっと大切にしてもらえる。」
私は圭のひざに耳をあてた。
「私も幸せにしてね。」
圭は寂しそうに微笑んだ。
「幸を不幸にしてごめんな。こんな男の最期に付き合わせて。」
「何言ってるの。私の大切な宝物に・・・・。怒るわよ。」
「俺が死んだら いつまでもひきずるなよ。
誰かが幸を必要としてるなら すぐにその男を知って好きになれよ。
肉体も存在もない男をいつまでも絶対にひきずるな。
俺は ちゃんと見てるからな。
幸が歩き出せたら 喜んでるって思えよ。」
「わかってるよ。安心して。大丈夫だから。」
「それだけが気がかりだ。
俺と再会したばっかりに……悲しい思いをさせるんじゃないかって。」
「会えてよかった。
一緒にまたこうしていられるんだもの。
後のことはもう考えないでおこうよ。」
私は顔をあげて圭を静かに横にした。
「ねえさん……すっかり変わっちゃっててびっくりしたよ。
幸には憎い人間だろうけど……俺にとってはかけがえのない姉だから…
俺のせいで…と思ったら申し訳なくなったよ。」
「みんな圭のこと愛してるから……。
きっと私たちは…圭によって繋がってる気がするわ。」
「俺 死ぬ前に みんなを救いたい……。
救えるかな俺……。時間がもうないような気がして……
幸が来るまで 毎日毎日不安で仕方がないんだ。
一番最期にみるものは 幸がいいな。
幸の笑顔……肉体も存在もなくなってもさ 幸の笑顔だけ
おぼえていたい……。」
「うん 絶対そばにいるから…安心して…。」
「俺だけ幸せでごめんな。」
圭の落ちくぼんだ目から涙が零れ落ちた。
「バカね 圭・・・・・。私がいるから…泣かないで……。」
やせ細った圭の頬を静かに撫ぜると
子供のように声をあげて 泣きだした。
「いい子だから 泣かないで・・・・圭・・・・。」
私も泣きそうだった。
だけど 今は泣いちゃダメ・・・・・。
圭を守るんだから 強くならなきゃ・・・・・。