悲しい再会~172話~
前の日は眠れなかった。
おじとおばが来たら・・・・何を言われるか
正直 怖くて仕方がなかった。
心がどんよりしている私の半面 まっさおな青空が広がった。
空を眺めながら歩く
もう来ているだろうか・・・・。
中庭のベンチでなかなか 踏ん切りのつかない心と向き合っていると
聞き覚えのある声が聞こえて息をのんだ。
「すっかりやつれてしまって・・・・。」
「驚いたよ・・・・。
あの日高が………。可哀そうだな。」男の人の声
「でもすっごく元気だった。
笑顔だった・・・・・。幸せそうだった・・・・。」
「ほんと 元気だったな。すごくいい顔して笑ってた。」
「幸の・・・力ってすごいな・・・・。」
「さっき日高が言ってた人かい。」
「幸のこと話す 圭くんは・・・・すごく幸せそうで…
私は なんてひどいこと二人にしてしまったんだろう。
時間を戻せるなら あの時に戻して 潔くあきらめるべきだった。
そしたら 圭くんはこんな病気にならなかったかもしれないし…
もしなったとしても 二人の時間がたくさんあって
圭くんはもっともっと幸せだったかもしれないのに・・・・
私は一番大切だった人の人生をぶち壊したんだわ。」
華子が泣きだした。
「でも…好きだったんだろ?華子ちゃんも真剣だったんだろ?
日高ならわかってくれるさ。
だからあの時 華子ちゃんを見捨てないで日高はそばにいたんだから。
幸せになってくれよって言ってただろ?
俺に頼むっても言った。」
「私だけ幸せになっていいのかな……。
圭くんも幸も・・・・不幸にしたんだよ私・・・・。」
「幸せになろう。俺じゃダメかな。」
「私みたいな女でいいの?わがままよ。
わかってるでしょ?散々 振りまわしてきたわ。」
「俺のこと好きになってくれれば少しは……なってくれるよ。
急がなくていいから…だけど十年は待てないよ。
おじさんになってるからさ。」
「芹沢さん 長生きしてくれる?」
「華子ちゃんの方が若いんだから…そうはいえないけど
まだまだ頑張れると思うよ。」
「幸に会ってくる・・・・・。
幸が許してくれたら…私も幸せになってもいいって思う。」
「そっか。
一度会っておいで・・・・。
今日来るってさっき日高が言ってたよ。」
「うん。」
私はそのやりとりを なぜか心の氷が溶けるような
温かいものを感じていた。
私はベンチから立ち上がって 声のする方へ行った。
二人は背中を向けて 海の方を眺めていた。
「幸せになって 華子・・・・。」と声をかけた。
「え?」
華子の横にはちょっと体格のいい 人のよさそうな男の人が立っていた。
「幸・・・・・。」戸惑った様子の華子の顔。
「全部聞いちゃって…そこの裏のベンチにいたの。
おじさんやおばさんに会うのがちょっと怖くて・・・・。
華子の気持ち・・・すごく嬉しかったよ。ありがとう…。
残された時間 圭と一緒にいてもいいのね。」
「ごめんね。ずっとずっとうらやましかったの。
意地悪してごめんね。」
華子が私に抱きついて
「ごめんなさい・・・・。ごめんなさい・・・。」
そう言いながら 泣いた・・・・。