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悲しい再会~167話~

「病院?」

海が美しく見える小高い丘の上に車が停まった。


大きくはないけれど 病院だった。

私の中の嫌な予感が どんどん現実化してくるのが怖くなって


「睦月………。」と呼ぶ。



「うん。幸の思ってる通りだよ。これからもしかしたら

俺は地獄を見せるのかもしれない…だけど…救ってほしいんだ幸しかできない。

俺は圭くんにずっとずっと憧れて生きてきたから…

圭くんがいて幸がいたから まともになれたのに…

俺は圭くんのために何も力になっていない……。

幸には申し訳ないけど……今の圭くんを支えてほしいんだ。」


「悪い……悪い病気なの?」

体に悪寒が走りだした。


「うん……。本人に生きるって気持ちもないから余計に悪い。」


私は口をおさえた。


「そんな………。」


「ごめん幸……。だけどどうしてもこのまま圭くんを…死なせたくなかったんだ。」


知らなくてよかった……。

だけど……知ってよかった……。


いろんな感情が湧きあがる。


「気持ちを落ちつけたいの。先に行ってくれる?

私 廊下で…圭くんの様子知っておきたいから。」


「ありがとう。

きっと圭くんすんごく怒ると思うけど……俺にね。

先に話した方がいいかい?」



「何も言わないで……。華子は?」


「華子は親父が決めた肩腕と婚約させられたよ。

親父は圭くんの病気を知ってから 鬼になって…かあさんは腑抜けになっちゃったよ。

幸にしてきた罰が こんな形で圭くんにふりかかったのは

自分のせいだと……責めてるよ。」



ざまあみろ

そう言いたかったのに…その罰を圭が受けるなんて…納得いかない。

私を一瞬でも お姫さまにしてくれた 圭

愛を教えてくれた圭・・・・・・。


私に何ができるんだろう。



三階の個室の前の廊下のイスに座った。

目で合図して 睦月は病室に入って行った。


「圭くん…。よっ。」

睦月の明るい声が悲しく聞こえる。



「睦月 また来たのか?遠いのに無理すんなよ。」


力なく聞こえてきたのは…私が愛してきた人の声だった。


「具合はどう?」


「うん まぁまぁってとこかな。仕事は頑張ってるか?」


「圭くんが見つけてくれたとこだし 必死で頑張ってるよ。」


「そっか。いつか愛する人を見つけたら

その人とその人との間に増えて行く家族のために働くって

ことは男にとって絶対必要なんだからな。

華子は幸せにやってるか?」


「芹沢さん いい人だからな。華子のふてくされも可愛いらしいよ。」


「よかった。華子には幸せになってもらいたいからな。

俺のそばにいたって何もしてやれないんだし 兄さんも姉さんも安心しただろ。」


「まぁね。」


「よかった。俺が悲しませた分 取り返してほしいな。」


「かあさんはでも元気ないよ。」


「だろうな。姉不幸してるな俺。

睦月も頼むぞ。俺がいなくなった後…よろしく頼むよ。」


「なこと…言わないでさ。今日は天気がいいよ。

バルコニーにでも出てみるかい?」


「睦月も来てくれたからな。出てみようかな。海が真っ青だ。」



しばらくして窓が開く音がした。


「寒くないかい?」


「上着とってくれるか?」


その声に静かに私は病室に入って行った。

車いすの圭の後ろ姿が 涙で曇る。


睦月は上着を私にとって目で合図した。


私は睦月と入れ替わりで 圭に近づく。



こんな悲しい再会をするとは 思ってもいなかった。

小さくなった後姿…はねた髪の毛……


愛おしさが体中に湧きあがってくる。


上着を後からかけて 背中から圭を抱きしめる。


「ただいま……。圭……。」



風がヒューッと心地よく流れて行った。




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