新しい季節へ~166話~
睦月が現れるのを待っていたけど あれから睦月は来なかった。
しびれをきらして後輩の子に
連絡先を聞いてみた。
「これ…板垣さんの携帯の番号です。
合コンの責任者から 仕入れておきました。」
「ありがとう。」
「年下タイプだったんですか?」
「違うわよ。ちょっと昔の知り合いだったの。ありがとね。」
番号を聞いてしばらくは悩んでいた。
睦月に連絡したらもう後戻りはできないと……。
だけどこの間の凛といい
圭の身に何かがあったことは私にも気がかりだったから……。
一週間悩み抜いたけど
睦月にとうとう電話をかけた。
「もしもし…あの睦月?幸なんだけど…
突然ごめんね。」
「やっと…来た…。待ってたんだぞ。」
電話のむこうで睦月がため息をついた。
「え?」
「幸から圭くんに会いたいって意思なんだろ?」
「それはそうなんだけど…この間凛が来てね…。」
凛とのいきさつを話すと
「あいつも変わらないよな。だけどたまにはあいつもいいことするじゃん。」
「いいこと?」
「幸が動き出すきっかけを作ってくれたからさ。」
そう言われればそうか……。
「圭さん 何かあったの?」恐る恐る聞いてみる。
「もしさ…幸の中で圭くんがまだ大切な人なら
何も考えないで圭くんをそこから奪えばいいよ。
俺も悩んだんだ。幸を巻き込むのが…本当に正解なのか……。
でもこうやって自分から来てくれたし
ちょっと俺も気持ち楽かな。」
「ね…何があったの?」
「明日は仕事?」
睦月と待ち合わせて 会うことになった。
圭を・・・・奪うか・・・・・?
今さらね…圭は 板垣を選んだのに……
待ち合わせ場所に行くと 睦月は先に来ていた。
「行こうか……。」
「うん……。」
どこに行くのかも聞けずに…走る車
睦月もあまり口を開かなかった。
私も緊張してる。
圭に会うんだろうか…。
圭は私を見て なんて思うんだろう。
今さらって……思うだろう。
「ずいぶん遠いとこに…行くのね。」
一時間すぎても つかずにもう札幌からはずい分離れている。
「本人の希望でさ……。そこがいいって言うから。」
私は札幌から出たことがなかったから……
どこにいくのかがよくわからなかった。
「華子と一緒にいるんでしょう?」
気になっていた。
「ねえちゃんは 一緒にいたいみたいだけどね……。
でもどうにもならないだろ?結婚できるわけもないし……。」
それはそうだけどもとはと言えば
華子の自殺未遂が私たちを引き裂いたきっかけだった。
華子も華子で 愛を貫きたかったのかもしれない。
愛した人と結ばれない運命ほど 呪うことはない。
華子の場合は根本的に 親族だという一番の隔たりは
今思えば辛いことだったんだろう。
いつも間にかうたた寝をしていて 慌てて目を開けて
風景を見ながら ここはいったい……と思った。
「ここってさ……幸のふるさとなんだよ。」
「え?」
「幸が四歳まで住んでいたところなんだって。」
「そうだった?私はほとんど覚えてはいないけど……。」
「圭くんが住みたいって言ったんだ。」
どうして圭が……。
「十分 幸をひきずってるだろ?」
私は圭に会いたくて 胸が高鳴っていた。