出会い~十六話~
園長先生に呼ばれたのは春休みに入る寸前だった。
園長先生は少し暗い顔をしていた。
いつも世話をしてくれている先生が
私にイスを出してくれた。
「急な話で私たちも困惑してるのだけど……
さっちゃんはここを出ることになったの。」
「え?」私も唐突な言葉に現状が理解できないでいる。
「まずは…今まで言わないでほしいということだったから
あなたには話せずにいたのだけど……
あなたのおとうさんは双子の弟だったらしいのね……。
それで双子のおにいさんが 弟の事故死を知ってさっちゃんを
こっちに呼びよせてうちの園に入園させたの。」
パパが双子……
その衝撃の真実に驚いた。
「それでね…用意が整い次第あなたを引き取るって言われたんだけど
なかなか…連絡が来なくて……。
そして昨日いきなり電話をもらって……準備が整ったので
春休みにあなたを引き取りたいって……。
きっと幸ちゃんも幸せになれるわ。」
「ピンクのランドセルもその人がくれたの?」
「それは違うらしいわ。
私も確認したんだけど…きっぱり違うって言われたから…」
違うんだ…じゃあ誰なんだろ……
「今の学校 転校することになるけど……」
先生が私の顔を見た。
「転校するの?」驚いた。
「そうなの。おうちがもっと向こう側だからそこに近い
学校にもう決まったらしいわ。」
「新しい家族ができるのよ。」
園長先生が言った。
「新しい家族・・・・・・」
その言葉が胸に響いた。
じゃあもう孤独じゃないんだ。
ご飯はみんなで食べるんだ。
パパにそっくりな顔の人と一緒に………。
最後の日
得意になって立った凛の横に私が立った。
「凛ちゃんと幸ちゃんが転校します。」
凛も驚いた顔だったけど クラス中も驚いていた。
「うっそ~~~さっちゃん~~」
口ぐちに私の転校に驚いていて 嬉しかった。
その時凛の睨みつける視線を感じたけど もう凛にも
会うことはないしと
私は初めて堂々と凛を見返した。
凛は私の様子に一瞬ひるんだけど私は今までの恨みとばかりに
凛を睨みつけた。
あんたなんか大嫌い
私はその気持ちを一杯にして凛を見据えた。
「さっちゃん~せっかく仲良くなったのに~
行かないで~~」
女子が口ぐちに言ってくれて 私との突然の別れを惜しんだから
凛の立場がなくなっていた。
いい気味……
振り返って凛を笑う。
今までの一杯の恨みをこめて……
凛は悔しそうにしていた。
もうあんたに二度と会うことはないわ……
そう思っていた。