流れゆく時間~百五十五話~
その夜は ぐでんぐでんになるまで酔っ払って…飲んだことのない酒を
流し込んだ。
忘れてしまいたい
でもどんなに飲んでも 二人の幸せそうな姿が焼きついて離れない。
静は壮介が新しい恋をしていることより
自分を裏切っていたことが許せなかった。
別れを告げられた時 大介に頼って
間違いを犯した。
自分の母親のように 快感に気が狂う自分にショックを受けて
そして離れて行く壮介にすがることもできなかった。
自分はこの別れを 他に女ができて捨てられたとは…思ってもなかった。
もっともっと重要でキレイな別れで
そしていつかまたきっと 壮介が迎えに来ると信じて
壮介の母親の墓を大切にしてきたのに……。
人の世界が憎しみや 裏切りに溢れていても 壮介との関係だけは美しくあってほしかった。
大介とああいうことになって
静かは自分を責め 悩み続けていたのに
壮介は違ったのかと……愛しさよりも憎しみが上回って静の心を
ドス暗く汚して行った。
飲んで泣いて…そしていつしか眠っていると
従業員に起こされた。
「閉店ですから…。」だけどもう腰もたたない。
「警察呼びますか?」
静はもう大介を頼るしか道がなかった。
しばらくして男の声がして 「静……。静…。」と呼ばれた。
体がふわっと宙に浮いて もうそこからの記憶がなかった。
次に目がさめるとホテルのベットの上 驚いていると大介が
バスタオルを腰にまいて出て来た。
「あ・・・・なんで・・・・・。」
大介はあの頃よりずっと男らしくなっていた。
「おはよう 酔っ払いさん もう少しで警察に通報されるとこ。」
「え・・・?」
「俺も手をあましてホテルに連れて来たってわけ。」
思いだしたら飲み続けてる記憶しかない。
「ごめんね…迷惑かけて…大介くんにだけはもう絶対に頼らないって
あの時誓ったのに……また…こんなことしちゃって…。」
「ホテル来てからはトイレでずっと吐きっぱなしで
もう髪の毛とかも臭いから…早くシャワーしてきなさい。」
静は自分の醜態に頬をおさえた。
「ごめんなさい~~~。」
大介は笑顔で近づいてきて
「シャワーに入っておいで…そしたら静に戻るから。」
そう言うと私の乱れた洋服を一枚一枚脱がせていった。
私は魔法にかかったように動けなくなっていた。