離れていく心~百四十九話目~
どうして壮介がそんなことを言ったのか・・・静には全てが
伝わってはいなかった。ただ一緒に歩くのをやめよう……。そう言われただけで…。
地方の大学にいく壮介を追っていくことは
世話になっているおじやおばの手前難しいことだった。
板垣のおかげで持ち直したと言っても いつまたそうなるか分からない
二人には静は働くといってある。
「すまないね。頭がいいのに。」
「ううん。女はそんな勉強なんかしなくても…ね。」
つとめて笑って答えたけど本当は辛かった。
でも壮介がいるから…静はそう切り替えて生きて来たのだった。
ちいさい弟の圭も静をここに 留めておくおく大きな原因でもあった。
頭の中の混乱を必死に整理していた。
「静ちゃん……大丈夫かい?」
大介の顔を見ずにうなづいた。とてもよく似てる大介に優しくされたら
このまま間違えを犯してしまいそうだった。
「会社で使ってるコテージ……ここなら大丈夫だだよ。」
大介は運転手から鍵をもらうと
「じゃあ…くらいに迎えに来て。」運転手は道を引き返して行った。
扉を開けて 静の手を引いた。
「あ……大介……くん……。」
大きなベットの部屋に静を入れた。
何かされるんじゃないかと静の心臓は高鳴ったけど
「この部屋ならいいよ。俺は下のリビングでテレビ見てるからその代わり今から一時間だけね。
運転手が迎えに来る時間もあるから。」
何化されるんじゃないかと思った静は 自分を恥じた。
「ありがとう…大介くん……。」もう涙で大介の顔が見えないくらいだった。
大介が部屋の扉を閉めると同時に 静の泣き声が聞こえた。
「壮介……壮介……どうしてよ……。」
壮介と静の間に何かが起きたと 確信していた。
今しかない……
大介は緊張した。ここで失敗するとまた 静を手に入れるのが
遅くなってしまう。
テレビの音を消して映像だけ見ていた。
静の泣き声がかすかに聞こえた。
そしてこれから自分はどう動くべきかを考える。
静を手に入れる手段を頭の中で考えていた。
父親は静と自分が付き合うことを嫌がらなかった。
多分それは 静の後にあるおじの会社の存在がある。
壮介と静が付き合ってる事も 父親のことだからわかっているだろう。
壮介と静ではなく 大介と静を結ばせようとしている意図はまだ見えてこない。
だけどとりあえず父親という非情な協力者の力は借りられるはず。
そのうち大介は眠ってしまっていた。
「……そうすけ……別れるなんて…言わないで……。」
しばらくたった夢うつつの大介の耳に 静の声が聞こえて来た。
「お願い…一人にしないで……。」
冷たい……
涙のしずくが 大介の顔におちて来た。
大介は混乱している静を 抱き寄せる……。
今しか…ない……
「う・・・う・・・・。」静の嗚咽が大介の胸に吸い取られて行く・・・・・。