すれ違う想い~百四十五話~
罪悪感はあったけど その日静は 学校をさぼり大介と一緒にいた。
壮介が悪いのよ。今まで散々さぼるといったのに……
だから壮介と過ごせる今日をとても楽しみにしていた。
今頃 壮介は……。
そんなことを考えながら大介と映画館に出かけていた。
一方壮介は めずらしく熱くなってバスケットボールを追っていた。
相手は大嫌いな洋一のクラス
日ごろの恨みも加算して 壮介は洋一のボールを執拗にカットしてやる。
そのたびに聞こえてくるのは
「日高せんぱ~~い!!」とうさぎのように飛び跳ねるまどかの高い声だった。
まどかにいいところを見せたい壮介は
去年までテキトーに参加していた球技大会全く別人になっていた。
静に嘘ついちゃったな……
罪悪感がたっぷりだった。
静は予定通り学校を休んでいる。
帰りにでも寄ってみようか……。
負けると思ったゲーム終了間際 洋一がもう勝利を確信して集中力がなくなったのを
壮介は見逃さなかった。
素早く洋一からボールを奪い 長い距離から シュートを見事に決めて
逆転優勝に導いた。
チームメイトの輪の中に 壮介はいた。
すぐにクラスの生徒たちも加わり 体育館の中央で喜びを爆発させた。
不思議だった……。今まで味わったことのない熱い感動が 壮介を包んだ。
「すげーよ!!壮介!!」
「かっこいいぞ~壮介!!」
今まで話たこともなかった クラスメートが自分のことをそう呼んだ。
くすぐったいような…恥ずかしいような……
その輪の外にいるまどかと目があった。
まどかは 首にまいたタオルで涙を拭いていて 満面の笑みで何度も
ぶんぶんとうなずいた。
壮介はまどかに 手で合図をした。
その様子に気づいたおせっかいな クラスメートが
「壮介 彼女か?」
まどかの大泣きと見比べてそう聞いたから
「ちが……。」言い終わらないうちに まどかを中央に引っ張ってきて
「壮介の彼女も一緒に喜ぼう!!」そう叫んだ。
クラスメートたちの盛り上がりに壮介の声はかき消された。
「違うって!!何言ってんだよ!!」
まどかの喜び方は 尋常じゃやなかったから誰もが彼女だと
思いこんでも不思議ではなかった。
誤解は解けぬまま まどかは壮介と輪の中心でぴょんぴょんと
飛ぶ跳ねる……。その姿は本当に可愛いと思った。
静のことを一瞬完全に忘れて
壮介はまどかを愛おしいと思ってしまった。