すれ違う想い~百四十三話~
まどかは美人ではないけれど どこが可愛いのか追求するのには
とてもいい相手だった。
そして一緒にいるととても癒された。
壮介はいつも まどかの天然キャラに笑っていることが増えていた。
反対に 静に対して罪悪感も大きくなっていた。
静を愛してる気持ちには変わりない。
心も体も求めているもは静しかいないのに
どこかで安らぎたくて まどかという存在が住みついているのは事実だった。
「今度の土曜日ね すごく見たかった画家の展覧会があるんだけど……
付き合ってほしいの。」
静がめずらしく興奮した顔で言った。
静は美術的なものや 小説……特に壮介なら絶対に読まない
理屈っぽい話のものが好きだった。
以前 静がはまっていた小説を貸してもらって
感想を何度か求められたけど けっこう苦痛だったから
「悪いけど 俺はこう言う感じはあまり魅力感じないから……
感想も特にないかな……。」
そういうと静は悲しそうな表情を浮かべたから
「ごめんごめん」そう言って抱きしめてキスをしまくった・
「絵か・・・・・・。俺は一緒に行っても共感できないからな。」
思わず気乗りのしない返事をしてしまった。
「そっか……。いいよいいよ。友達とかにも聞いてみる。」
「うん。共感できるヤツといった方たいいよ。
いるじゃんそう言うの大好きなやつら。」
「うんいるから…大丈夫…。」
まだその時は 静が選ぶその相手が誰なのか想像もつかなかった。
そしてその反面で
壮介の心の中で まどかを誘って土曜日 出かけてみようかなという
静を裏切るような計画が頭をよぎった。
まどかと一緒にいると楽しかった。
学校帰り少しだけ話をするだけだったのに 最近は地下鉄に乗らずに
二駅くらい一緒に話ながら帰って家に送るようになった。
不思議な魅力だった。
まどかには人を惹きつける力があった。
たまに学校で見かけるまどかの周りには 笑い声があり
友達がたくさんいて……そしてその中心に まどかがいた。
どっちかというと孤独な一匹狼の壮介には 考えられないオーラだった。
一緒にいると話題豊富なまどかの話を聞いて
爆笑している自分が すごく楽な気持ちでいられる。
まどかは今 送別球技大会で頭が一杯のようで 輝いている。
「俺には一番苦手な競技かな。」
「でも先輩って運動神経いいじゃないですか。マラソン大会も三位だったし…。」
「個人競技向きかな。俺は団体嫌い。」
「団体ってやりとげた達成感が大好き…。なんか山登って頂上から
すごくキレイな風景を見てるような…そんな感じ。」
「山登るの?」
「はい。よく両親と休日に登ってました。なつかしいな~。」
まどかは遠い目をしていた。
「両親と最後に登った山……今は冬だけど……行ってみたいな。」
「最後?」
「うち…高校に入ってすぐに両親事故で死んじゃって
今……おじいちゃんの家でいとこたち家族と暮してるんです。」
まどかは空を見上げてそう言った。