すれ違う想い~百四十話~
「おまえは俺によく似てる。」父親の声に足を止めた。
「は?俺はあなたのような人間を軽蔑してますから。見本にすらならない人です。」
「あははは・・・・おまえは手厳しいな。」
父親が壮介の肩を叩いた。
「大学には行け。おまえにそうしてほしいとかあさんも言っていた。
だからおまえをここに 預けたんだぞ。」
「大学に夢もありません。俺は社会に出て自立します。
あなたの世話にならなくてもいいし…それに……
卒業したら結婚を約束してる人がいます。」
大介はその言葉に心臓の鼓動が速くなった。
「結婚か・・・・。おまえは結婚をままごとに思ってるな。 」
「ままごと・・・。いいじゃないですか。
愛する人と一緒になって 家族をつくる 男は家族を養うためだけに働き
女は 愛する人と力を合わせて 子どもを守る
俺がしてもらえなかったことを一生かけて やっていきたい。」
「ふ・・・・・まだまだお子ちゃまだな。
もっと勉強しろ。家族養うために大学へ行け。この時代稼げない男は
家族を幸せにもできない。わかるだろう?おまえなら。
金が全てだ。」
その言葉に壮介が言葉を失っていた。
「いいか。愛する女を手に入れたいなら 一生幸せにしたいなら
金はどれだけあっても足りないんだ。金があればみんな幸せだ。
もっともっと野心家になれ。おまえはその目を持っている。」
「大介がいるじゃないですか。大介ならあなたのいうことを
聞くだろうし 言うとおりになるでしょう。」
「あいつは・・・・ダメだ。」
大介の心臓は音をたてた。
「そう言うヤツだから もう上には望めない。
言うとおりにしかできない。社長なんかやらせたら のっとられてしまう。」
大介はその言葉に 拳を握りしめた。
「俺の全てを譲れるのはおまえだと確信した。あれだけ教育させても
何もしていないおまえに成績でもアイツは勝てない。魅力もない。
幻滅したな・・・・・。」
大介はその言葉を背中に部屋に戻った。