すれ違う想い~百三十七話~
壮介と静はひさしぶりに 抱きしめ合っていた。
無我夢中で 何度も何度も 時間を忘れて愛し合った。
壮介は 心地よい疲労感に肩を揺らして息をする 静を静かに見つめていた。
なんてキレイなんだろう……
静の美しさは 今は蝶のようだった。
今までさなぎの中で眠っていた美しさが 目を覚まして
それを一人占めできる自分は幸せだと思った。
壮介の視線に気がついた静が 慌てた様子で目だけ残したまま布団にもぐった。
「何?やだ……なんかついてる?」
「違うよ。キレイだなって思ってさ…。」
「嘘……そんなこと……。」恥じらいながら布団をかぶった。
「静は俺のそばにずっといてくれるよな。」
静はやっと顔を出して
「あたりまえよ。私には壮介しかいないもの。」
そう言うと壮介を包み込むように抱きしめた。
「高校出たら 結婚しよう。
俺は就職するつもりだから……絶対一緒にいようね。」
「うれしい・・・・。」
「圭は俺たちの子供のようにして 育てていこう。」
「私も働くわ。働くの好きだから……。」
しばらく二人は未来について語り合った。
家族運に見放されて育った二人は 絶対どっちから死ぬまで一緒にいて
子供たちに呆れられるくらい 仲のいい夫婦でいよう
そう語り合った。少し眠ると目覚ましが鳴った。
「もう…時間なのね…。」
「これからはこうやって…過ごそう。」
「うん。しょっちゅうサボるのはいけないけど
たまにならいいわよね。」
「見ないでね。」隠れるようにして 帰り支度を始めた静をもう一度
押し倒した。
幸せだった。
壮介にとって静は 絶対離れることのない家族の一人だった。
守るべき人だった。
周りを見渡して 壮介は静の手を引いて階段を駆け降りた。
そして慌てて靴をはいて 家を飛び出した。
風を二人できると 笑顔になれた。
「大好きよ 壮介・・・・。」
「俺もだよ。」
繋いだ手をまた力いっぱい握って 二人は道を駆け抜ける。