出会い~十二話~
おにいさんは優しく笑った。
「そうだよ。魅力的な女の子にならないと王子さまが
気づいてくれないかもね。」
「だって幸……いつもこんな格好だし
髪の毛はおかっぱだし……それにね……なんか臭いって言われたの。」
恥ずかしかったけど
おにいさんがあまりにも優しい笑顔だから
思い切って聞いてみた。
「臭くないよ。なんの匂いもしないよ。
洋服から柔軟剤のいい匂いがするけど……
きっとさいつもきれいに洗ってくれてるんだね。
幸ちゃんからはいい匂いするから安心していいよ。
そんな意地悪に振りまわされちゃダメだよ。
幸ちゃんは幸ちゃん
幸ちゃんが自分を好きになったらそんな言葉聞こえてこないって。」
「幸を好きに・・・・?」
「うん。自分を好きになってあげないと……
おとうさんやおかあさんが悲しむよ。」
「悲しんでるかな・・・?」
「心配してるよ。きっと……。
そんな大きな声で泣いてるからさ……。」
おにいさんの携帯が鳴っておにいさんは体を起こした。
「あ…行かなきゃ……」
「あ!!おにいさん!!また会える?
ここで会える!?」
私は必死でおにいさんにすがった。
「いつかまた…きっとね……。」
「いつかって……?」私は不安になっておにいさんに
すがりついた。
「幸ちゃんがすてきな女の子になったらまたきっと……
会いに来るよ………。」
「ホント?幸頑張ってたら また会いに来てくれる?
おにいさんは 幸のこと忘れない!?」
「ここに写真があるから……
美しいティアラをかぶったお姫さまを忘れないよ。」
おにいさんが私の頭を撫ぜて言った。
「お姫さま……またいつか…お会いしましょう…。」
そう言うと私の真っ赤な手をとって
キスをしてくれた。
おにいさんはまたより一層激しくなった雪の中に消えていった。
おにいさん………
私は夢を見てるようだった。
おにいさんは高校生くらいで制服を着ていた。
優しい笑顔で笑ってくれて……
いつかまた会えるって言ってくれた……。
嬉しくてなかなか眠れなかった。
その時 また激しく傷が痛みだした。
「いた・・・・いたた………。」
足がもげそうなくらい痛くて私は転げ回った。
先生たちにも何度か訴えたけど
病院にも言ったけど気持ちの問題と済まされてしまって
もう誰にも言えなくなった。
しばらく痛みと戦って そして痛みは消えた。
「よかった……。」
私は太ももを撫ぜた。
そしておにいさんのことを考えようと思った。
だけど……さっきまで頭の中を閉めていたおにいさんの顔が
思い出せなくなった。
「あれ…どんな顔だったんだろ…」
必死に思い出しても顔が浮かばなくなった。
ただ…おにいさんとかわした言葉と
幼心に芽生えた恋心を残して………。
「いつかきっと会えるよ……。」
そういつかきっと……それまで私……
おにいさんがガッカリしないように頑張ろうと心に誓った。