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大人の階段~百十九話~

洋一と同じクラスになったばかりに 平穏だった生活が一変した。

壮介は無表情に 洋一の言葉を聞き流すのが必死だった。



「壮介…大丈夫?」静が心配そうに言った。



「静もいじめられてきたって言ってたろ。俺もそう。

きっかけはアイツ。最悪な気分だよ。」



「あの人女子の間でも人気ないよ。すごく嫌われてる。

壮介が可哀そうって同情してたもん。」



「そうか。人間まだ捨てたもんじゃないな。アイツのおかげで

知られたくないこともまた知られたし……。」



「板垣くんのこと?私もビックリしたわ。中学の時同じだったから。

でも初めて壮介に会った時 誰かに似てるって思ってたから……。」



「タイプは全く違うんだけど双子だからな。

でも俺たちはもう何年も話したことないんだ。兄弟だけど一番遠い存在かな。」



  一番遠い存在・・・・・。



「好きよ。私は壮介が一番好き……。

もし板垣くんが 壮介と全く同じ顔になったとしても私だけは

壮介を見分けることができるもん。」



「え?どうやって?」


壮介は静を抱きしめた。



「私を見つめる目が……壮介は優しいから……。」




壮介と静は一つになるたびに心も体も溶けあうような気がした。




「俺は世界中の人間からそっぽむかれても

静だけが俺をわかってくれれば……それでいいよ。」



静と出会えてよかった……

壮介はそう思った。人に愛され抱きしめられることがこんなに心地よいことだということを

静によって教えられた気がした。



「アイツに負けないで。」




「うん。」



静がいれば……何も望まない……。



壮介はそう思った。




「日高さん。」ある日洋一が 友達と話している静に声をかけた。



「何?」



「この間さ 塾で一緒だった友達に日高さんと同じ中学出身がいてさ

アルバム見せてもらって ビックリしたよ。

すごい変わったんだね。大介も同じ中学だったんだって?

アイツはあんまり他人に興味示さないからわかんなかったけど。」


静が変わったというのは もうずいぶん前にピークを終えた話しだった。



「個人写真みてさ ぶっ飛んだよ。」



静はムッとした顔をしていた。

あの頃のことには触れてほしくはない それも 壮介の前では

してほしくない話題なんだろうと思っていた。



「俺 今の日高さんにしか知らないから そいつに言ったら

そいつもぶっ飛んでた。あはは~二人でぶっ飛んだ~あはは~~」



しらけた空気が教室内に広がった。

壮介は次に何か言ったら 飛んで行こうと思って息を整えていた。


気をきかせて 友達が

「静ちゃん トイレ行こうか。」と静の手を引いた。



「あ…うん。」静が立ち上がった。



壮介は友達に感謝した。




静が教室を出た後 洋一がそばにいた男子に


「ほんと別人だから。不潔で臭くて嫌われてたらしいぞ。

今とは想像もつかないぶさいくな女。整形したんじゃないのか?」


そばにいた男子がリアクションに困っている様子だったが


「ばけもんだな。」


また静を悲しい子にするのかと壮介は カッとなった。

自分と静が重なって いじめられたりバカにされることがどんなに

辛いことか このバカは何もわかっていない。



「日高 静には騙されんなよ~~。」そう言って高笑いする洋一の

背後から近づいて振り向かせた。



「テメーいい加減にしろや。」

壮介はカッとしているのに 冷めた声が出て自分でも驚いた。



「正義の味方のふりですか?狼さん。」小憎らしい顔



「人が嫌がっていることを言うのはやめろよ。空気読めよ。」



「は?俺はホントのこと言ってるだ……」言い終える瞬間

洋一の頬に拳が入った。



机をバタバタと倒して 派手に洋一がひっくり返った。

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