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大人の階段~百十七話~

引きつけられるように お互いの寂しさをうめるように

壮介と静は親密になっていった。


「結婚したら…絶対に死ぬまで一緒にいる夫婦になろうね。」


家庭運が悪い二人は そう言い合いながら

まだ幼いなりに結婚の約束をしていた。


「親の勝手で子供に寂しい思いをさせることは 自分たちが親になった時は

絶対にしたくない。一緒に子供を育てて 子供が出て行ったら 二人で好きなことをして

そして最後の瞬間まで一緒にいよう。」


それが家庭に恵まれなかった二人の誓いだった。



幼い圭も 壮介によくなつき 「そうちゃん」と呼ぶようになった。

壮介は男の意地とプライドにかけて 静に負けまいと必死に勉強をした。

二人でいる時は 抱き合って愛を語り合っている以外は

勉強をするようになっていた。



「静はどうしてそんな頭いいの?うらやましいな。」



「勉強するしか趣味なかったし テレビも漫画もみれなかったでしょ。

教科書見るしかないじゃん。」



「そっか~~俺はそこらへんはまったく自由だからな。」



大介を入れて三人で上位争いをしていたが 今は一位争いを静としている。

大介を抜かすことよりも静に勝ちたいと思っていた。

だけどまだ静に勝ったことはなかった。



「この間 阿部さんに聞かれた。壮介くんと仲いいのって。」



「ああ…阿部さんね……告白されたよ。断ったけどね。」



「え~~告白されたの!?知らなかったよ。え~~!!」動揺する静に

少し嬉しい壮介だった。



一人だけではなかった。最近モテ期なのか…続けて三人から

告白された。

断ると 「好きな人いるの?」と聞かれたから


「いるよ。」と答えた。


壮介はもうばれてもいいと思っていた。

真剣な気持ちで付き合ってるんだし……それにキレイになってきた静を

見る男子たちの視線にも少し心配だったから……。




「私と付き合ってるなんてわかったら…大変よ。

壮介…バカにされてしまうわ。」 静は慌てた。



「俺は静が彼女で すごく自慢したい気分だけどね。」



「自慢?私なんて昔…不潔とか臭いとか…言われてたから……。」

悲しそうに下を向いた。



「それは清潔にできない事情があったんだよ。

今の静を見て 誰もそんなこと言うやつはいないよ。

反対にさなぎから生れた 綺麗な蝶みたいだ。」



「蝶だなんて……。」静は嬉しそうに笑った。



「俺が見つけた…俺だけの蝶だから…静は……。」



今は勉強よりもずっと 静を知ることが楽しかった。

静は壮介の生きた教材で 静が喜んだり 恥ずかしがったり すねたり

いろんな表情をみるのが 一番楽しかった。



「静をもっともっと…知りたい……。」



「私ももっと知ってもらいたい。」



大人の階段を登り始めた二人は 今までの寂しさを愛で埋めるのに必死だった。



「私を壮介のお嫁さんにしてね。」



「うん。ずっと死ぬまで一緒だよ。」



二人は一つになるたび 幸せの誓いを立て合った。



そう……二人はずっと信じていた。

初めての安らぎに  一生 二人一緒にいれる……そう思いこんでいた。

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