大人の階段~百十五話~
家につくとマサヨが笑顔で迎えた。
「静ちゃん 本当によかったね。
いい子で頑張ってるから きっと神様が力を貸してくれたんだよ。
幸せに暮らしなさいね 応援してるから。」
「ありがとうおばさん。」
静が涙ぐむと マサヨも涙を拭いた。
「今日はちょっと急いで作ったから
大したものはないんだけどね食べて行きなさいね。」
「すみません。」
しばらく居間で マサヨと静が話をしていた。
壮介は部屋に行って着替えながら 二人の話を聞いていた。
今の叔母の家での暮らしはとても 幸せなことや
圭も自分も あたりまえのことができなかったから あたりまえができて
すごくすごく嬉しいと 静は声を震わせた。
それから 自分の母親への恨みの言葉を語りだして
静の母親がどんなにひどい女なのかw
めずらしく早口で話した。
「そうなの。おかあさんは…女でいたい人だったのね。
誰かに女として愛されたいって…そう思ったんだ……。
でもその気持ち わかる気がするの。こうやって離婚して…一人でいるとね
すごく切なくなる時があるのよ私だって……。
男の人一人にもまともに愛されなかった…自分は女として
ダメな女なのかなって……。
静ちゃんのおかあさんは…自分にきっと自信があったのね。
私との違いはそこにあるのかもしれないわ。」
壮介はその言葉に少し複雑だった。
「愛される女がうらやましいなって…思うよ。」
マサヨの言葉に 父が選んだ若い女が浮かんできて
壮介は母親がとても可哀そうに感じた。
「何言ってんだよ。かあさんは…俺には最高の女だよ。
世界一の母親なんだぞ。」
思わずそう叫んでいた。
一瞬 マサヨと静は目を合わせて 笑い始めた。
「なんだよ。」
「ありがと・・・。ほんと……ありがと……。
おかあさんも壮介の母親で幸せだよ……。そうだね……。
ほんとありがとうね壮介……。」
そういうとマサヨは泣き出した。
壮介が驚いて立ちつくしていると 静がマサヨを抱きしめた。
「私も…子供にそう言ってもらえるおかあさんになりたい……。
私も…おばさんが大好き。おばさんが私のおかあさんだったら…
いつも想像してたの。壮介くんが自慢するの私よくわかる。」
「静ちゃんまで……。
そしたら…もう二人は絶対に結婚して……。
私は二人のいい母親でいられるから……。」
マサヨの冗談話に 壮介はドキンと胸が鳴った。
「うん…。壮介くんに私からも頼んでみる。
お嫁さんにしてって……。」
静の言葉の返しに 壮介はドキドキして
「何でそんな……話に発展すんだよ。」
マサヨと静が笑いだして…つられて壮介も笑った。
いいかもしれないな~~
壮介は そんなことを考えていた。