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絡まる糸~百十一話~

人に優しくされたという記憶は少ないけど とても優しい女性がいた。

母親の同僚で一度 会った時の印象がとてもよくて あんな人が自分のおかあさんだったら

そんな憧れを抱いてしまうような女性だった。


初めて会った時 その人はすごく叱られていた。

母親が「新しく来た人は ちょっととろいんだよね。いつもお局に叱らればかりいるんだよね。」

と笑い話にして 言っていた きっとその人かなと 静は思った。



あまりに叱られていて 気の毒だと思っていたら その人は静ににっこりと笑いかけた。



「いらっしゃいませ。」




「あ…あの…私 日高の娘です。」




「あ 日高さんのね~~。角谷マサヨです。お世話になっています。」笑顔が優しそうだった。



それからその人の笑顔に会いたくて 買いものはなるべく遠かったけど

そこのスーパーに出かけては姿を探した。

母親が店をやめても 静は通った。



母親がそこの人たちからお金をかりて どうしようもなくなったのは

かかってくる電話のやりとりでわかっていた。だから仕事を辞めたんだ。



「おばさんからも・・・お金かりたんでしょう?」

ある日 圭をおんぶしていつものように マサヨを探して勇気を出して聞いてみた。



マサヨは困惑した表情だったけれど

「きっと大変だったのよ。うちもそうだから……返すのも難しいものね。

子供はそんなこと気にしちゃだめよ。」



マサヨは静の背中をポンと叩いた。



人から大切なお金を借りて…若い男に貢いでいる母が憎かった。



そんなある日のこと



「うちに来ない?」そんな静を察したのか マサヨはそう言うと微笑んだ。



自然に首が動く


「はい。」すごくすごく嬉しかった。




マサヨと一緒に買いものをした。

母親と一緒に買い物をするようですごく新鮮だった。

母親とは一度もそんな記憶はなく クラスメートがよく会話している

母親とのやり取りを聞きながら うらやましく思っていた。



「何が食べたい?」優しい笑顔。

この人がおかあさんだったら・・・・そんな気持ちになると胸が熱くなる。



「手伝います。」マサヨが圭を寝かしつけてくれたので

台所に立ったマサヨに 静はそう言った。



「いいわね~女の子も~~~。じゃあ甘えちゃおうかな。」

マサヨが笑った。



マサヨも母子家庭で静と同じ年の男の子がいて 生活が大変だと笑った。

子供はとてもいい子で よく協力してくれて助かると教えてくれた。

母子家庭でも こんな母親の元で暮らせたら どんなに幸せだろうと

静はうらやましく思った。



楽しい時間だった。



  おかあさん・・・・



そう呼びたい・・・・・そう思った。

 



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