出会い~十一話~
雪の公園を大声をあげて泣いて歩いた。
すれ違う人はいるけれど 驚いて見てるだけで
忙しそうな振りをして足早に通り過ぎる。
別にいいよ……
誰かに言いたいわけじゃない……
ただ私にとって大事なものを失くしてしまったという
虚しさと運命を呪っているだけ……。
今日の雪は大きい結晶ですぐ溶けてしまうから私の髪の毛は
べちゃべちゃに濡れている。
「どうしたの?」
後から声をかけられて 私は飛びあがった。
ふり向くとブレザーに赤いネクタイをした男の人が
傘を持って立っていた。
そして膝を折って目線を私と同じにした。
「どうしてそんな大きな声で泣いてるの?」
優しい声だった。
「う……あのね……ヒック…ヒック…」
別に誰かに話したいと思ったわけじゃなかったのに
おにいさんの優しい声に思わず言葉になってしまった。
私は大事なランドセルがなくなったことを
嗚咽混じりにおにいさんに伝えた。
おにいさんは 言葉につまる私を静かに待ってくれて
また話しだすのを優しい顔で待ってくれた。
「そうか……。先生見つけてくれるといいな。」
「うん…でもね…きっと見つからないの……。」
「どうして?」
おにいさんが私の言葉に首をかしげた。
「幸は呪われてるから……」
「え?呪われてる?」
「うん…幸せになれないんだって……ヒック…
だから…パパもママも死んじゃって……幸は園で暮らしてるの……。
新しいランドセルだったのピンク色で……
幸の友達だったの……。」
そう言い終わると私はまた大声で泣いた。
おにいさんは私に傘をかけてくれて
「白雪姫の話知ってる?」と聞いた。
「知ってるよ……ヒック……
王子さまのキスで元気になって……結婚するの……。」
「白雪姫も呪いかけられたよね。
でも…王子さまが助けてくれるのを信じて
眠ってる間もずっと待ち続けてた…」
「幸はお姫さまじゃないもん……。」
「ほら……見てごらん~」おにいさんが優しく言ったら
携帯で写真を撮った。
「何?」私はいきなり写真を撮られたので警戒した。
「ごめんごめん~~ほら見て……。」
私の顔の前に携帯を見せて言った。
「ほら…ティアラだよ……。」
「え?」
確かに頭の上の雪が解けて耳上のところに溶けかかった雪がたまっている。
「お姫さま…みたいだろ?」
「うわ~~本当だ~~」
溶けかかった雪がキラキラ輝いて見えた。
「泣かないでお姫さま……きっと王子さまが現れて
きみの呪いをといでくれる日が来るよ。」
「王子さま…はおにいさん?」
私は恐る恐る尋ねた。
「それはどうかな~~本物の王子さまを君が探しだすんだよ。
きっとその王子さまが呪いをといてくれる……」
「幸は絶対幸せになれないって言われたもの……。
知らないおばさんに……。」
「そんなことないよ……幸ちゃんが信じてたらきっと
幸せがやってくるよ。」
「ほんと?ほんとに幸せになれる?」
「うん…それにはいい子で頑張ってないと
王子さまが好きになってくれないからな。」
おにいさんが私の顔についた淡雪を優しくほろってくれた。
雪は肌に触るとすぐに溶けてべちゃべちゃになって
私の顔を濡らす。
「ティアラが証拠だよ。
幸ちゃんは……お姫さまなんだよ。」
おにいさんの優しい声が心に沁みとおる。
「王子さま…幸がいい子にしてないと
好きになってくれない?」
私は心配になっておにいさんの腕をとった。