表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/190

絡まる糸~百八話~

優秀な静は 奨学金という制度のおかげで学校に来られるようになった。

そして母親の妹宅に身を寄せることになって

偶然にも 壮介の家の近所に 引越すことになったと

めずらしく笑顔で 静が 弁当屋に寄った 壮介に教えてくれた。



いろいろ話を聞いていくと その叔母と言う人に壮介は何度か会っていた。


よく犬を散歩させている女性で 壮介はなぜかそこの犬に

気にいられていて 姿をみかけると 挨拶をする人だった。



ある日の朝 またいつものようにその人は犬を散歩させていた。




その人は自分と静が友人だということを知らない様子だったけど

なんだかありがたくて 壮介はその女性に



「日高さんのおばさんなんですね。」と声をかけた。



「あら…やっぱり知り合いだったんだ。制服が同じだったから…

もしかしたらって思っていたの。」



「角谷 壮介 っていいます。同じクラスなんです。

ちょっといろいろあって学校に来てなくて心配したんですけど

ありがとうございました。」思わずなんて言っていいか そう挨拶した。



「ありがとうって……」静の叔母は笑った。



「いえ…日高さんは勉強もできるし…もったいないって思ってて…

小さい弟もいて これからどうするんだろうって心配してたんです。」



「静 あなたにそんなお話していたの?よっぽど信頼できる仲なのね。」



「そんな・・・ただ自分たち境遇がよく似てて…母しかいないので…

すごく心配してました。」




叔母の女性は 犬を抱き上げた。



「もっと早くなんとかしてあげたかったんだけど あの子たちの母親……

私の姉なんだけど…とんでもない女で…ずいぶん私も苦労したの。

だから…静は不憫だったけど…姉にまた巻きこまれたくなくて…あの子たちとは

一切関わりを持たなかったんだけど…仕方ないものね。

子供に罪はないわ。それにまだあんな小さな子供までいるんだもん。

うちは幸いに子供はいないから…姉さえ出てこなければ…余裕もあるし…

なんとか手を貸してあげられると思って……。」



「よかったです。これで僕も安心しました。」



「あはは・・・・。

なんだかきみにすごく感謝されて 私もいいことしたようで嬉しいわ。」



犬の頭を撫ぜた。



「あの子にそんな友達がいるなんて…ちょっと安心したわ。

前の学校ではいじめられてるって聞いたから……。これからも

あの子のことよろしくね。」



「はい。


壮介は頭をさげた。

なんでこんなに 自分のことのように嬉しいんだろう。

壮介は 静がやっと幸せになれると確信してすごく幸せな気分になった。



母親にそのことを話すると 

「よかったわね。あのうちは 社長さんらしいわよ。

うちのスーパーにもよく買いものに奥さんくるから 他のパートさんが言ってた。

静ちゃん 幸せになれそうね。」




「よかったよ。なんか俺もホッとしたよ。」



母親は目を丸くして


「あら?そうなんだ~。」と含み笑いをした。




「なんだよ。かあさん。感じ悪いぞ。」壮介は照れて怒った。



「何よ~~おかあさん何にも言ってないじゃない。」



母親が壮介の脇腹をこちょばした。



「やめろよ~~俺ももう大人なんだぞ~~。」




楽しい笑い声。

まだ自分は幸せだと思った。

一人じゃない かあさんがいつも俺を愛してくれている……。



それだけでも 人生が幸せだと思った。

誰か一人でも 自分を必要としてくれて愛してくれる毎日……。



いつか照れずに言おう。



「かあさん俺 かあさんの子でよかったよ。」って。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ