絡まる糸~百四話~
一旦 母と別れて 壮介は新しい生活の場へ向かった。
幸いなことに洋一はいなくて ホッとした。
「壮介くん。」後から声がして振り返ると セーラー服姿の静が笑っていた。
「おめでとう。それに同じクラスだなんてうれしいわ。」
「おめでとう。俺もうれしいよ。」
そう言ったけどなんだか恥ずかしくて壮介は 照れた。
「おばさん来てる?」
「うん 今日は初めて来られたんだ。小学校以来だよ。」
「お休みとれてよかったね。」
静は髪の毛をみつ編みにして微笑んだ。
クラスには頭のよさそうな人がたくさんいた。
これは入ってから大変なことになるな……。
そんなプレッシャーも感じさせられた。
とりあえず ここで新しい生活を送るんだ。
体育館に入場していく時は胸をはった。
なぜか簡単に並ばせた背の順で ダントツ一番後だった。
そしてその横には静
思わず二人で顔を見合わせて笑った。
吹奏楽が流れる。さすがにいい音なのは 素人にもよくわかった。
入場していく時は 鳥肌が立って仕方がなかった。
母の姿は緊張して探せられなかったけど 母が喜んでくれるように
胸をはって堂々と歩いた。
なんだか 母が来てることでとても緊張したような壮介だった。
式が始まり 入学生代表の名前を聞いて 愕然とした。
「一年八組 板垣 大介。」
「はい。」大きな凛とした声が響いた。
板垣・・・・・?大介って・・・・・・。
壮介の心は激しく動揺した。
まさか……あいつと同じ学校?
ステージに上がってきたひさしぶりに見た大介は まだ背が小さくて
華奢な感じだったけど 見るからに頭がよさそうな表情をしていた。
頭の中で ガンガンと音が鳴っている。
一見 絶対誰も 双子だなんて思わないだろうけど……
大介は堂々と代表としての挨拶をこなしていた。
かあさんはどんな気持ちでいるんだろう……
もしかしてとうさんも……いるのか……。
「新入生代表 一年八組 板垣 大介。」話終えると大介は堂々と
ステージを降りて行った。
「板垣 大介くんは 我が校始まって以来の 入試点満点という素晴らしい成績で
合格してきました。今年の新入生のレベルは高い どうかここで
必死に頑張って 国公立大学目指して頑張ってください。
それでは 上位五人の発表です。
第一位 一年八組 板垣 大介 第二位 一年一組 日高 静
第三位・・・・・・第四位・・・・・・
最後に 第五位 一年一組 角谷 壮介 以上。」
俺・・・五位??
驚いて顔から火が出そうだった。
しかし 一位には満点の 大介が君臨していた。
父親の笑う顔が想像できた。
ここで二人を争わせるために ここに壮介を入れさせたんだ。
いろんな感情が入り乱れる実は双子の大介と壮介
父親の策略が見えた気がした。
まんまとひっかかったな……
まさか自分たち双子をこんな形で再会させるなんて…親としてはありえないことだ。
あいつは父親としての血も流れてないのか……。
あんなに必死で勉強してきた結果がこれか…壮介はバカらしくなった。
大介だけとは絶対に会いたくはなかった。
もっともっと自分が立派な男になって見返してやりたかった。
母もきっと動揺しているだろう……。
壮介は 母親が心配になった。
堂々と臆せずに挨拶した大介がいつまでも心に残っていた。
俺はおまえにだけは負けたくない
壮介は拳を握りしめた。