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愛憎の始まり~百話~

三年に上がって勉強が忙しくなってきた。

塾に行ったり家庭教師が来たり 息をつく暇もない。



父親は若い女と 週末アメリカに遊びに行ったりと 留守をすることが多くなった。


昔からいる お手伝いの松代が大介を不憫だと泣いてくれた。

人から情けをかけられるくらい自分は何なんだろうと思った。



とりあえず高校に合格したらきっと何かが見えてくる。

何かが変わっていく



そう信じて必死に勉強する大介だったが

三年の二学期 生徒会も引退してなんだか 気が抜けてしまっていた。



一日の授業が終わって窓の外を見ていると 日高静が 走っている。




  相変わらず 何をそんなに急いでいるんだろう。



静は 相変わらず大介とのトップ争いの中にいる。

噂によると家は貧乏で 塾すら通ってないと聞いた。

トップを争う中では 塾は外せない存在だけど 静はそうではない。




  生まれつき頭がいいのか…

  帰ってから勉強してるのか……


そんな興味がわいてきて ある日 小走りに家路に急ぐ静の後を追った。




静の家とみられるアパートはもうかなりの古さで

そこの一階に飛び込んでから すぐに 女が出てきた。

結構年だけど かなり派手に装っていて 夜の仕事をしているのが見てすぐわかった。



脇に停まっていた白い車の 助手席に乗り込んで出かけて行った。



  母親か?


しばらくするとおかしなコートを着て 静が出てきた。

髪の毛は一本に横に結んでドアのカギをかけた。



後姿を見て驚いた

静の背中には赤ん坊がいるようだった。



  え・・・・・・。



雪がちらついてきた。

静は後の赤ん坊にコートの帽子をかぶせて歩き出した。



大介はそれに引き込まれるようについていった。

かなり歩いて スーパーに入って行った。





  赤ちゃんって…あいつの兄弟なのかな




その後を追って 店の中に入って行った。

カゴをもって野菜を見ている。しばらくあとをつけて歩いた。



  もっと近いスーパーあるだろうに……


そう思ってついて行くと 静がパン屋で立ち止まった。

中を気にしているようだった。



「いらっしゃいませ。」白い白衣を着た従業員が出てきた。



「静ちゃん いらっしゃい~~

圭くんも元気かな。」その人は コートの中の赤ちゃんを覗き込んだ。



「買いもの?遠くまで…歩いてきたんでしょう?」


聞き覚えのある声に 大介は反応していた。



「同じ学校の人に見られたくないから……。それにこの間のお礼も言いたくて。」



「お礼?何言ってるの。お金はないけど困った時は

おばさんの所へ来なさい、遠慮しないで。」



「ありがとう おばさん……。

あ…息子さんにもよろしくお伝えください。」



「あの子も 静ちゃんのことほめてたわ。同じような境遇だから…仲良くなれると思うわ。

またお誘いするから 静ちゃんも遊びに来てね。」




「うれしい ありがとうございます。」



「今日は遅番だから ごめんなさいね。」




「ううん…。宿題もたっぷりあるから 買いもの済ませたら

勉強しなくっちゃいけないので……。」




「うちの受験生も頑張ってるから…静ちゃんも頑張ってね。」



静はその場を立ち去ったけど 大介は去れなかった。



  かあさん……



売り場にいるのは 母親だった。




「角谷さん。」




「あ…すみません。」


母は慌ててレジに戻った。



「日高さんの娘さんでしょう?

あなたもお人よしに付き合わなくてもいいわよ。

お金返してもらってないんでしょう?噂によると 夜の仕事してるみたいよ。」




「静ちゃんが気の毒で……。」



母はそういうと お客の来たレジを打ち始めた。




大介は体が動かなかった。

心で全て拒否していた母の姿だった。



忙しそうに働く母親

怒られたりしてる……複雑な思いがこみあげてくる。



出て行ってから 初めての母の姿だった。

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