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声。

亜和が気を悪くして嘔吐していると、まわりで見ていた親切な人達が集まってきた。


「だ、大丈夫かい!?君!!」


そう言って亜和に手を差し伸べたが、あまり注目を集めたくない亜和は走って逃げた。

走って細い路地に入り、亜和は座り込んだ。

座って落ち着こうとしたが、落ち着けるものも落ちつけるわけがない。

新聞に載っていた顔は『真夜』、『秋元』、『兎雫丸』だ。

人はこの世に3人は似た顔がいるというがいくらなんでも顔が似すぎている。

いや似てない。同じだ。

ふと、まわりを見ると研究所からは別の方向に進んでいた。

道を逆方向へ進み研究所へ向かった。




研究所についた。

まずはインターホンを押して、相手が出るのを待った。

インターホンの音声から「入って良いよ」と言う声がしたのでドアを開けて中に入った。

廊下を歩き、最初に見えてくるのが第一研究室。

その向かい側が第二研究室。

第一研究室の隣が休憩所。

第二研究室の隣がお父さんの個人研究室。なんとも分かりづらい構造になっている。

順番に研究室を覗いたが、父の姿は無かった。

姿が無いのにどうやってインターホンの音に気が付き、返事をしたのだろうか。


「おとーさーん!!お父さーん!」


大声で呼んでも応答は無く、怖くなってきた。

一つだけ開けてない研究室があった。

『大研究室』だ。大研究室は第一・第二研究室とは違くとにかく大きく、最新の設備が投入されている。

しかし「大研究室だけは開けるな」と父にきつく言われていた亜和は躊躇したが、父に届けなくてはいけなかったのでドアを開けた。

初めてみる大研究室の中。

中は思った以上に広く中央に大きな三つの柱があり、棚には何かのホルマリン漬けにされている物が多数あり、なんともSFチックな研究室である。

恐る恐る父を呼んでみた。


「お父さーん・・・着替えとか・・・持ってきたよー・・・」


しかし応答はやっぱり帰ってこない。

正面を向き、あたりを見回すと、三本の柱が気になった。

少し近づいて見てみた。


「・・・っひ!?」


中には人が入っていた。模型では無い。

一人は、短髪・鼻が高く・つり目だが、大きい目・ホッソリとした顔つき

一人は、髪が首につくかつかないかぐらい・鼻は低く、眼鏡をかけている・これもまた痩せている

一人は、小さい子供・髪はブロンド・目が大きくてクリクリしている・少しぽっちゃり系だ


「う・・・嘘だ・・・」


中にいたのは真夜と秋元と兎雫丸だった。


「嘘だ・・・。嘘だ!嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!」


あまりの衝撃に腰を抜かした。

嘘だと思いつつも体を引きずって何回も、何回も見ては涙を流した。


「・・・亜和」

「ひっ!?」


その声に一瞬凍りついた。

後ろを向くとそこにいたのは父だった。


「亜和、何してるんだい?」


父は笑顔で言っているが、この顔は前にみた秋元の顔とそっくりだ。

ひどく凍りつかせるような恐怖に満ちた笑顔。


「亜和・・・ここで何していたんだい?」

「っえ・・・あ・・・・えっと・・・・」


あまりの恐怖で声を出すことも難しかった。


「亜和・・・君は悪い子だ」

「っへ?」

「そこには入っちゃダメと言っただろう、ほら、でたでた」


そう言って父は亜和を追い出そうとするが、そうはいかなかった。

亜和は分かっていた、あの3人のことを。

勇気があればもうとっくに叫んでいる。

が、そんな勇気亜和には持ち合わせておらず、ただただ立ち止まる事が一番の抵抗だった。


「亜和!!早く出なさい!!!」


怖くて声も出ない。

父はまだ本気で怒ってはいない。

だが、怖くて怖くて仕方がない。

父に聞きたいことはたくさんありすぎて埋もれそうになる。

その埋もれた状況から出たい。

でも、聞きたいことが聞けないくらい怖い。

一番記憶と一緒なのが父だから。

父は、何?


「亜和!!無視するな!!早く出なさい」

「お、お父さん・・・」

「なんだ!?」


亜和は一番聞きたいことを持ち合わせても無い勇気を気力から振り絞って声に出した。


「私は、何?」





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