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佐久間はやっぱり最高

作者: 瀬田正義
掲載日:2026/03/20

   佐久間はやっぱり最高

   

         瀬田 正義

         

   幸せは足元に気付かずにある

   

   

 今年も冬が来た。外も冷え込んで外に出るのも億劫になるが皆は年末年始のイベントを楽しみに英気を養い沸々と頑張っている。町の木々はすっかり枯れて人々は着込んだ格好で肩を窄めて歩いている。俺は最近アメ横のヒノヤで買ったバズリクソンズのMA-1が気に入り気分良く過ごしている。

 今日は晴れていていつもより少し暖かい。特に忙しくも無くゆっくり煙草を吸ったりインスタントコーヒーを飲んだりしていた。新聞の夕刊を配達員が届けた雰囲気があったのでポストに取りに行った。その時家の前に一人の女がいた。佐久間だ。何か機嫌良さそうにしている。俺はさほど気に留めず家の中に入ろうとした。その時佐久間が話しかけて来た。

「ねえ、今から良ければあたしと松戸駅の方に散歩に行かない。いつか誘おうと思ってたんだ」

 俺は一瞬で考えた。佐久間は俺の中では印象が良い。眼鏡を掛けてスカートを履いてるとこが可愛らしい。ここは一つ誘いに乗ろうと考えた。

「うんいいよ。支度して来るからちょっと待ってて」

 佐久間は凄く喜んでいる。可愛いもんだ。俺は荷物をジーパンのポケットに入れ上着を着て出て行った。

「そのMA-1超いいじゃん。お前センスあるなあ」

「うん、気に入ってるんだよ」

「これから松戸駅方面に繰り出すぜ。覚悟はいいな」

「覚悟してます。さあどうぞ」

 俺はこれから始まる事など知る由も無く佐久間と歩き始めた。

 少し歩いて行くと佐久間が言った。

「そこのコンビニに入るぜ」

 俺は佐久間と一緒にコンビニに入った。そのコンビニのレジの所にリカちゃんくじなる物がある。佐久間はそれを見てこう言う。

「お前これからこのリカちゃんくじ引けよ。きっとリカちゃん当たるよ」

「うん、買ってみようか」

「とりあえず十発買いな」

 俺はリカちゃんくじを十枚買った。何とその時一等のリカちゃんが当たった。佐久間が目を潤ませて言う。

「おおーすんげえマジでリカちゃん当てたな。すげーや」

「うん、良かった」

 佐久間が御機嫌で道を歩いてる。俺も釣られて嬉しくなった。喜んでいる佐久間は可愛く見えて愛おしくも見えて来る。佐久間が歩きながら言う。

「何か腹減って来たぜ。そこの牛丼屋行くか」

 佐久間が勢い良く店の扉を開ける。そして店員にこう言う。

「牛丼大盛り二人前汁だくだくで今すぐ作れや」

 少し恥ずかしい気もしながら待っていたら店員が言う。

「へいお待ち。君達仲いいね」

「当たり前よ。あたしとこいつはベストバディだぜ」

 佐久間に引き連られて近くの公園まで行った。佐久間は笑顔で話しかけて来る。

「とりあえず牛丼食うか。遠慮すんな」

 俺は牛丼を食べて改めて美味しく感じた。佐久間が牛丼をがっついて食べてるその姿はまさにエクソシストだ。俺は牛丼を食べるのに集中した。その時佐久間が言う。

「あたしいつか言おうと思ってた事がある。あたしと結婚してくれや」

「ううん、何と言うかわからないよ。直ぐに決められないし」

「あたしは本気だよ。お前と一生一緒に暮らしたい」

「とりあえず煙草を吸おうよ」

「そうだなスモーキングタイムだ」

 俺は牛丼を食べ終わり煙草を吸う佐久間が切なく見えて来た。佐久間は可哀想な人だ。煙草を吸い終わった佐久間が言う。

「おいお前、これからそこの公衆便所であたしとディープレイドして言うことを聞けや」

「ええー、これから何をやるんですかー」

「お前はいい奴だ。これぞ純愛だぜ」

 俺は佐久間に公衆便所に連れて行かれ魑魅魍魎な時を過ごした。混じる吐息。絡み合う牛丼の香り。男の喘ぎ。女の雄叫び。全てが一つになった時そこにお巡りさんがいた。佐久間がお巡りさんに言う。

「これは自由民権運動の端くれだ。法的に問題ねーよな」

「法的には問題無いけど何やってんすか」

「もう帰る。あばよ」

 俺は有事が起きない様に祈りながらその場を去った。佐久間と家に向かう道すがらに俺に話しかけて来る。

「今日はいい思い出が出来た。所であたしとそのリカちゃんどっちが大切だ」

「そう言われても何て言えばいいかわからないよ」

「まさかお前リカちゃんの方が大切なのかよ」

 その時佐久間が俺に踵落とし蹴りを打ち込んで来て俺がとっさにリカちゃんで蹴りを受けた。リカちゃんは見事に首が取れてしまった。

「ああーリカちゃん。そんなー」

 そして佐久間が更に追い打ちを加えて上段飛び膝蹴りを放つ。俺は顔を強打して倒れた際に頭を地面に打ちつけて気絶した。俺の鼻から大量の血が噴き出てる。気を失う寸前に佐久間が言う。

「今度会う時は結婚の打ち合わせや。覚えとけや」

 俺は冬の寒空の下に行き倒れになってしまった。俺は何かふわふわと上空に上る様な気がした。その時目の前に何かが近づいて来る。見覚えがある。木原健二さんの霊体だ。俺に話しかけて来る。

「お前は真面目でいい人なり。ここで人生が終わってはならぬ。さあ目を覚ませ。そして家に帰れい」

 俺は目を覚ました。そして家に向かって歩いた。

 

 人生は良い事も悪い事も色々ある。数多くの人に支えられ毎日前に向かって進んでいる。どんな事にも意味がある。無駄な時間など無い。

 

 佐久間は俺にとって何なのか。運命の人なのか。そして俺は今日も松戸の道を歩き続ける。

 

 俺はいつもあなたの側にいます。

 

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