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第39話 『冒険者登録』

カイル曰く、天命因子とは、すべての生命が稀に持って生まれる特殊な能力らしい。

祝福と呼ばれるが、同時に呪縛として恐れられることもあるとか。




曰く――同じ天命因子は、この世界に二つと存在しない。


 

曰く――魔法や訓練では絶対に習得できない。


 

曰く――生まれた瞬間から発現し、制御不能……ただし、稀に部分的な操作だけ可能な者がいる。




生まれつき声に竜種特有の支配周波が乗ってしまう因子もあれば、逆に、魔法補正がまったく働かない代わりに、魔法そのものや呪いを強制的に無効化してしまう因子もあるらしい。

……まあ、その辺まではカイルも真面目に説明してくれていたのだが、


問題は、そこでマスターがサービスと言って謎のショットを置いてきたことだ。


ありがたく一気に飲み干したのだが……


はぁ!? いやいやいや、これテキーラのショットだろ!? ふざけんなマジで何考えてんだよ!!


完全に殺しにきてるじゃねぇか。

……いや、マスターなりの善意なんだろうけども!!


俺は月影装備の毒無効化があるから平気だが、問題はカイルだ。


「くぁせ……ふじこるぷ……」


……何言ってるかわからん、わからん……。

本当は、この街の話とかも聞くつもりだったが……この有様じゃどうにもならん。


金はカイルが勝手に出すと言い張ったからそれは任せるとして……

とりあえず土産は、この店で売っていた妖精の乳月(ちずき)を二切れ買って帰ることにした。

 


 


翌朝。

悪酔いもせず、すっきりした目覚めだ。


……にしても、チーズ二切れで銀貨十枚も取られたぞ!

カイルの言ってたとおり、あのチーズは相当高級品だったんだな。


それはそれとして、異世界で生活し始めてようやく通貨のレートも分かってきた。


 

・銅貨一枚=十円

 

・銀貨一枚=千円

 

・金貨一枚=十万円



だいたい、そのくらいだ。

つまり、チーズ一切れ五千円。

って……アホか! ホテルの高級おつまみより高ぇじゃねぇか!


でもまあ、向かいでリカとリュナが頬をふくらませて幸せそうに食べてるのを見ると……買ってよかったと思えるな。

異世界に来てから心に余裕ができたのか、こういうのにちょっと弱くなってきた気もする。


さて、とりあえず目的のギルドに行って、冒険者登録を済ませてきますか。


 




リュナに先導されて、冒険者ギルドまでたどり着いた。

さすが大都市ピエイ……辺境なんて言われてるが、ギルドも立派なレンガ造りの建物じゃないか。


リュナは普段はアホだが、リュミナの記憶を覗いてガイドしてくれる分、こういう時はほんと助かる。

ただ、口で説明させると支離滅裂な時もあれば、妙に的確な時もある。

きっとリュミナの記憶から、うまく検索できる時とできない時があるんだろう。


中に入ってみると、モンスター素材を売る冒険者や、併設された酒場で朝から飲んでる連中がちらほら居る。


報酬受け取って、即酒場……実に冒険者らしいな……俺はその前にシャワー浴びたいけど。




受付まで進むと、カウンターの受付嬢がにこやかに説明してくれた。

内容はシンプルで、登録料として銀貨一枚を払い、職印石と呼ばれる魔道具に触れれば登録完了らしい。


横を見ると、リュナは職印石に釘付けで、目をキラッキラに輝かせている。

……こいつから受付に回してやればよかったな、絶対そっちのほうがスムーズだったわ。


「では、お名前と種族をお伺いした後、こちらの職印石に触れてくださいね」


「名前はイザナ、種族は人間だ」


そう告げてから、言われたとおり職印石へ触れる。


「確認しました。では、

――登録、鑑定」


受付嬢が起動語を告げる。

すると、職印石から光が糸のように伸び、受付嬢の手元にある鉄製のカードへ吸い込まれるように流れ込んだ。


「……適性職の鑑定は?」


「はい、まもなく職印石の表面に浮き上がってくるはずです。少々お待ちくださいね」


しばらく待つと、職印石の表面にじわり……と白い文字が浮かび上がり始めた。


……生命魔法使い。


「ヒーラーのようですね」


受付嬢はにこりと微笑んだ……が、声色もほんの少しだけトーンが落ちて、違和感が残る。

……なんだその反応、絶対いい印象じゃないだろ。


「ヒーラーはダメなのか?」


「いえ、ダメというわけではないのですが……ポーション技術が進歩しておりまして、ここ数年はヒーラーの需要が低下しているんです。ですので最近は、医療系統の職は、医者や薬師などをおすすめすることも多くて……」


「そうか……」


まぁ、別に俺の目的はスローライフだ。

冒険者で食っていけなくても、薬師になって薬でも売ればいいさ、むしろそっちの方が気楽でいいくらいだ。


「次! リュナも触る! えっと、名前はリュナ! 種族は変性スライ──」


「ッッッ!!?」


反射的に、リュナの口を塞ぐ。

……あぶねぇ!! お前、それ絶対言っちゃダメなやつだろ……!


「……ス、スライ……?」


受付嬢の声が、明らかにひきつる。


「ち、ちがう! あっ、あ! 種族は竜族ですッ!!」


慌てて言い直すリュナ。

受付嬢は「あ、あぁ……?」と目を白黒させながら職印石を確認し……


「おお……す、すごいですね! ドラゴンナイトの適性が……ありますが……」


「なにか問題があるのか?」


「いえ、ドラゴンナイトは上位職でして……通常はB級以上の冒険者になって、ようやく適性が出るはずなんですよ……」


「リュナは S きゅう だよ?」


受付嬢は完全に固まった。


「………………しょ、少々お待ちください」


顔が笑ってない笑顔のまま、書類を持って奥へ消えていく。


「……お前なぁ」


思わず、いつもの調子でコツンとリュナの頭に軽くゲンコツを落とす。


「いっ……いたいですぅ……!」


「ですぅ〜じゃねえよ、言うなって言っただろ〜?」


「だってぇ……つい……」


尻尾しゅん。


そんなやり取りをしていると……


「お待ちのお客様〜、こちらで登録いたしますよ〜」


「はーい♪」


リカはぴょん、と軽く跳ねて、嬉しそうに隣の受付へ駆けていった。






ほどなくして、さっき奥に消えてった受付嬢Aが戻ってきた。

そして、リカの応対をしていた受付嬢BがAに小声で状況を引き継ぐ。

二人が慌ただしく確認し合っている様子からして、どうやら何かあったのは間違いない。


「………………しょ、少々お待ちください!!!」


今度はさっきよりもずっと焦った足取りで、受付嬢Aは再び奥へ消えていった。


だが、俺は、さっき二人が小声でやり取りしていた内容を読唇術で拾っていた。


(……り、リカさんは……風魔法と精霊魔法に適性があるようで……精霊魔法は、本来A級にならなきゃ……出ないはずでは……)

(確認……もしかしたら……本物……かもしれないですよね……?)


……やれやれ、エルフの対応は想定外過ぎてギルドも混乱してるってわけか。

それはそうと、殺し屋時代に叩き込まれた読唇術が、まさかこんな場所で役に立つとは思いもしなかったが……。






数分後……受付嬢Aがようやく戻ってきた。

そして、震え気味の手つきで鉄製のカードを三枚、机の上にそっと並べる。

そこに刻まれていたのは、名前、冒険者ランクFというのと、「発行:リーネル王国・ピエイ」

……それだけである。


受付嬢は固い表情のまま、説明を続けた。

「……大変お待たせいたしました。では、リュナさんは特例扱いでD級冒険者。リカさんも精霊魔法の適性が非常に高いので、同じくD級からのスタートとなります。そしてイザナさんは……申し訳ありませんが、通常通りF級という扱いになります」


「なんか俺だけハズレっぽくて申し訳ないな……」


思わず口から漏れた本音に、受付嬢は慌てて首を横に振った。


「い、いえっ……! ハズレなんてことはありませんよ。冒険者ランクは戦闘能力を基準に決まります。攻撃魔法・肉弾戦・武器技能……そういった魔物を倒す力を評価して付けられるものですから」


「あぁ……そういう仕組みなのか」


要するにヒーラーは最初から低ランク帯ってわけだ。

まぁ、俺は別にFでも構わないさ……逆に低ランクのほうが目立たなくて都合がいい。

ただ、リュナとリカが二人揃ってDってのは、なんか釣り合いが取れてない気もするが……。


「あぁ、それと……これの買取をお願いしたいんだが」


俺はマナストーンの欠片とドラグナイトをカウンターの上に置いた。

これはこの前カネヤマ湖で拾ったものだ。


受付嬢はまず、マナストーンの欠片を手に取って確認する。


「マナストーンの欠片は……はい、状態も良さそうですね、こちらは銀貨二枚での買取になります。そ、そして……こ、こちらの赤い宝石は……え……? み、見たことが……」


「あぁ、これはドラグナイトっていう石みたいなんだが、買い取ってもらえるか?」


「ドラグナイト……!? えっ、えっ……!? あ、あの……ちょ、ちょっと確認させてください……!」


「さっきからなんでそんな大騒ぎしてんだよ……大丈夫か?」


受付嬢は生返事すら返せないほど動揺しており、すぐに他の職員へ手招きした。


「そ、それでは……素材査定室へ、ご案内いたします……!」

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