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おはやい再開

 パチリと目を開けた。

 再び見えたのは白い空間。もしかしてまた死んだのかしら。


「君さあ……」


 呆れた声が後ろから聞こえ、振り向くと神が立っていた。

 頭をガシガシと掻きながらもどこか神聖さを感じる。流石種族神。


「ああほら今も! 死んだかもしれないっていう状況でよくそれ以外のことが考えられるね!? ほんっとうにバカじゃないの?? ていうかなに悠然自若意気揚々と手首にナイフを刺せるね!!? 見てるこっちがハラハラするよ全くもう!」


 腕を組みながらぷりぷりと怒っている神。もう少し言葉に威厳というものは出ないのだろうか。喋ったら台無しになるタイプの人だなこりゃ。

 ていうかサラッと心の声読んだ?


「それは他の誰でもないあなたがくれた痛覚無効化能力により、精神への痛みも無効化してくれたからでは?」


 ともかくと言い返せば神は「……ほわっ?」と言ったあと、眼の前に青色の透明ウィンドウを広げ「そんなはず……まさか……」とかぶつぶつ呟きながら画面をスクロールしていた。

 そうしてお目当てのものでも見つけたのか、怪訝そうにしていた声色が一変し「マジじゃん……」という脱力の声が聞こえた。


「まさか故意じゃなかったんですか?」


「こんな精神麻痺みたいな危険な能力を死にそうな人にあげるほど僕が馬鹿に見えるのかい!?」


「……馬鹿そうには見えませんね。なんてったって神ですし」


「ふん、わかってるじゃないか」


「うわ偉そ」


 そういうと腕組を解き、まるでそこに床があるかのように空中に足を組んで座った。

 そうして青いウィンドウを操作しながら、こちらに向けて口を開いた。


「ぼくは一応結構偉いよ。星一つに留まらず二つを一人で管理を任される神はそこまでいないんだから。地球と今君がいるとこね」


「任される神が少ないって……星ってそんなに数ないんです?」


「君が地球に居た頃、一回でも生物が住める星を見つけたっていうニュースを聞いたことがあるの? あそこまで文明が発達してても、あんなに沢山の星を見つけても人が住めるようなところは一つも見つけられない。それが答えだよ。人……っていうか、生き物が住んでない星はそもそも管理の必要がないからね。まあ少ないって言ってもそんな三桁とかではないよ?」


「なるほど。……ん? 世界が別、なんじゃなくて星が別、なんですか?」


「そうだよ。だから異世界転生っていうよりは異星転生だね。こっちのほうが現実的だろう?」


 そう言うと「ああほらこれ」とと言って地球とヴィオラが住んでいるのであろう星が映し出された画面を見せてきた。映し出された星の下の名前が書かれており見慣れた一方には「地球」と。もう一方には「セレア」と書いてあった。セレアがヴィオラとしての私が住む星なのだろう。セレアのほうが海の色が緑っぽいところが多く、夜に明かりが地球ほど灯らないことを除けば大差ない見た目だった。

 それを見ながら「へえ」と感嘆しつつ神の言葉に返事をした。


「現実的かは置いといて異世界って言われるよりは腑に落ちる感覚ありますね」


 そういえばと、聞こうと思ってたことをふと思い出した。


「さっきみたいな補正とかって無限にしてくれるんです? 上限ないんですか?」


「さすがの僕でも上限なしは無理だよ……。さっき言った通り、僕は二つの星を任されてる。君みたいに面向かって話す人は僕の生涯でも手で数えられちゃうほどしかないけど、それでも大勢見なきゃいけないことに変わりはないから君一人を気にかけるのは無理さ」


 言われた言葉にまあそうだろなと思った。むしろ上限なしだったら、ただでさえループして死にかけてる生死の感覚が本格的に死にそうなので、まあこれでいいのだろう。


「ん? 見てなきゃいけないって……何かそういう補正をいれるためにはずっと私を見てなきゃいけないんです? ……変態?」


「気色悪い勘違いしないでもらえるかな? 君に危機が迫ると勝手に赤く染まったウィンドウが表示されて【神の救けが必要です。救けますか?】みたいなのが表示されるんだよ。睡眠中でも休暇中でも場所問わずでミュートにできない!」


「おっと、それはとんだご迷惑を」


 軽く頭を下げると、少しは怒りが収まったのか「はあ」とため息を吐いた。


「まったくもう……。上限は一日五回までね。ただしこれは自傷の場合にしか補正ができなくて、他人につけられた傷には補正は効かないから依然として周りには注意して」


「はーい」


 間延びた声で答えると、今度は神さんが何かを思い出したようで「あ」と口を開いた。


「そういえば、君を送り出す直前に君に言われた言葉が気になって、改めて地球の自殺人数とやらを調べてみたんだ。なんだいあの数値……? あんな酷いもの?? まさかあの平和な世界で、あの人口が一億人程度の島国で自殺した人が年間万を超えるなんて……。生存の危機があるわけでもなく、空腹とかもない。それなのあんなに……」


「家族関係とか、周りの目を気にしすぎるとか、自分は生きる意味があるのかとか、身体的な辛さがない分そういうところに脳みそが働いてしまうもんなのですよ。世知辛いものでしょう? 現実って。だから推しとかスマホとか、現実逃避ものに依存する人が多いと思うんですよねえ。特にスマホ。まあともあれ、見えないところで苦しんでる人は多いですよ。一度虐待家庭に記憶なしで自ら転生されてみては? 自分が他人の立場になって考えたり体験したりして見えてくるものもありますし」


「暇ができたら考えてみるよ」


「はは、その暇は何千年後になりそうですね」


「少なくとも君が生きてる間は君の面倒見なきゃだしね。……お、目覚めの時間だよ。行っといで。あんま来るんじゃないよ」


「はーい。あ、待って、ここに来る条件って」


「僕が呼ぶか、君が強く祈るかだ。まあ、暇じゃないからあんまり呼ばないでね。それじゃ」


 最後に神が手を振ったのが見え、私の意識はそこで沈んだ。

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