第4話 課題終わった?
21時になった。
課題を終わらせ、ぼくは連絡を待つ。
あれから、ぼくからも連絡してみたが、
「リスクがあるから、そちらからは連絡しないこと」
と返ってきた。
つまり、連絡を待つしかないのだ。
リスクか。何のリスクだろう…
傍受のリスク?
その時、ピロリンと携帯が鳴る。
連絡が来た。
『"スパイデア"をダウンロードして、ヒラルキの酒場に来ること。ユーザーネームは、ヒライシン8455jにすること』
スパイデア。とは、谷下財閥が最近出した、オンラインゲームだ。
確かリアルな街でスパイごっこをするんだったか。
そんな感じのゲームだ。
ダウンロードして、ユーザーネームを入力。
ゲーム内に入る。
酒場酒場……
あった。
こっちか。
歩いていく。
このゲーム、ダッシュがないのか?
どうやらスパイ行為をするというコンセプトで、ゲームバランスのためか、走れないようだった。
酒場に着いた。
中に入る。
すると、プライベートメッセージが飛んでくる。
送り主を見ると、レベル72⁉︎
超高レベルだ。
やりこんでいるのだろうか。
『明日の15時に笹中駅で集合。歴史の塔に行くので、その用意をしてくること』
明日は火曜日。
講義は昼までだから問題ない。
こちらの講義時間を把握しているのだろうか。
大学でパーティみたいなことをやっていたわけだし、十分あり得る。
──────
次の日。
講義が終わって、学食でかき揚げうどんを食べる。
350円。
これが中々美味い。
メニューにこれがある時は大体これを頼んでいた。
大学のうどんは味が薄いのが欠点だが、かき揚げがあるとそれも紛れる。
カリカリの衣を、うどんの汁に少しつけ、食べる。
その後、若干コシのあるうどんを啜る。
最後の方になると、崩れたかき揚げの一部が、汁を吸っていて、それもまた美味しい。
最後に汁を少し飲んで、食べ終わったら、13時過ぎだった。
これからどうするか。
マップアプリで調べたところ、14時にここを出れば間に合うらしい。
昨日のうちに課題も終わらせたし…
仕方がないので、次に課題になりそうなところをやっておくことにした。
なんて勤勉なんだ。ぼくは。
そんな風に思いながら、自習エリアに座る。
しかしお腹いっぱいで集中できない。
とりあえずスマホをいじるか。
休憩休憩。
……だめだ! 集中できそうにない!
勉強できそうにないので、早めに行くことにした。
駅に着き、少女がいないか確認する。
まだ30分前だ。
いないだろう。
そう思っていたら、いた。
少女はそこの近くのベンチに座って、本を読んでいた。
声をかけていいものか迷い、隣が空いていたのでそこに座る。
「来たよ」
すると少女は一瞬びっくりしたように見えたが、すぐに本のページを捲る。
「15時まではここで待つ」
そう小さくつぶやいた。
なので、ぼくもスマホをいじる。
いじりながら、少女の動きを意識する。
いつ動いてもいいように。
今、ここは僕たちだけの空間。
そんな気がした。
それから15時になり、徐に少女が立ち上がる。
時間か。
ぼくも立ち上がり、それを追った。