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第3話 記念樹

 先ほどまでと同様、少女の後を静かに着いていく。


 通る道は不規則…ぐにゃぐにゃだ。


 少なくとも記念樹までの最短経路でないことは確かである。


 道に迷っているのか?


 そんなことを考えてしまうぐらい、脇道に逸れた。


 そして目的地に近づいたかと思えば通り過ぎて、ついに古本屋の中に入った。


 中をぐるりと回る。


 ぼくら以外に客はいないようだ。


 そう思っていたら、少女が急に、レジの後ろの店の奥へ。


 え?


 ぼくは驚き、動きが止まる。


 店員さんは?


 レジにいた人を見るも、まるで何も見ていないかのように反応しない。


 行くか?行くか?……


 ぼくも意を決して、レジの奥に入った。


 

 店の奥の部屋で、少女がこちらを向いて待っていた。


「大丈夫?」

 小さく尋ねてくる。


 大丈夫かだって?

 そりゃ大丈夫じゃない。何をやっているのか、尋ねたかった。


「大丈夫。でもどうして…」


「静かに。話は後。まずは写真を撮る」


「ここから出たら、すぐにそこから離れて。この店から出てきたとバレないように。

 そしたら、すぐに記念樹だから、写真を撮る。分かった?」


 ぼくはごくりと唾を飲む。


 店を出たら離れる。


 記念樹が見えたら、少女の背中が入るように、写真を取る。


「分かった」


「じゃあ、行くよ」


 そう言って、少女は扉を開けた。


 早足でそこから出て、離れる。


 すると目の前には、記念樹が。


 本当に目の前にある。


 少女はさらに近づき、ぼくは立ち止まる。


 そして一通行人が記念樹の写真を取るかのように、そこにたまたま少女の背中が映ったかのように、シャッターを切った。


 ふう。と、一息つく。


 何とか無事に写真を撮れた。


 しかしその間にも、少女はそのまま記念樹を通り過ぎ、歩いていく。


 聞いていない。


 ぼくはどうしたら?


 とりあえず少女の行った方に向かって、ぼくも歩く。


 見失った少女を探す。


 近くには、服屋、メガネ屋、本屋、タイ料理屋…


 …いた。


 今視界の端にチラッと見えた。


 裏の路地に入っていった。


 急いで、早足でそちらに向かう。


 遠目に少女の背中を捉え、歩く。


 気を抜くと見失いそうだ。


 まさか写真を撮った後、また動くとは……


 人を避けながら進む。


 少女が通行人の陰に隠れた。


 そして見失った。


 マジか。どこ行った?


 ぼくは急ぎ目に歩き、追いかける。


 少女を見失った辺りの右手には、電気屋の入り口。


 まっすぐ行ったか、この中に入ったか……


 まっすぐ行ったなら見失わないはず。

 

 電気屋だ。そちらに賭ける。


 電気屋の中に入る。


 スマホのケース売り場。


 充電器売り場。


 探し回る。


 いない。


 外れだったか?


 「こっち」

 少女が隣に居た。


 見失った僕を見て戻ってきてくれたのか?


 助かった。


 少女に連れられ、電気屋から出る。

 

 そしてそのまま駅の方へ歩く。


 その途中の5階建てのビルの中に入った。


 最上階まで上がると、そこは休憩室のようだった。


 誰もいない。


「写真撮れた?」

 

「ああ。ほらこれ」


 少女に写真を見せる。


「OK。じゃあそれを送って」


「了解」


「それにしても、これはどういうゲームなの?」


 僕は少女に尋ねた。


「それは…」

 

 その時、ガチャっと、階段につながる扉が開いた。


「ここからは別行動。またメールで」


 少女は急いで歩き出した。

 

 ──────

 家に着いて、ぼくは寝転がる。


 あれから少女からの連絡はない。


 と思っていたらちょうど来た。


『明日の21時までに学校の課題等、終わらせておくこと』


 課題か…


 ぼくはため息をついた。




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