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06. パールは迷い人! 

 パールは少し考えた素ぶりを見せて、話しだした。


「んーっ、伯父さんたちの宿屋の近所で、庭の広い堀に囲われていて、中が外から見られない安全な家かな?」


 ソードが、おどろいて聞いている。


「すごく、現実的な意見ですね」

「あは、はっ! ホントだね! 考えたことはなかったけど、これがわたしの理想かも?」


 やはり、そうか……

 別がいいのか……


「パール。ダンジョンの近くだろ? そんなところ、もし見つかっても宿屋も家もすごく高いぞ! そんな金があるのか?」


 そうだよな。

 ガントの言う通り、だいぶするな……


「あっ、そうだよね。どれくらい、するのかな?」

「二軒分だろ? 最低でも金貨五百枚だから、白金貨五枚はするんじゃないか?」

「いえ、もっとしますよ。最低でも白金貨六枚からでしょうね」


 ああ、そんなにか……それは、無理だろう。

 黙り込んでしまったな。

 ガントがなぐさめて別のもっと安い場所を勧めている……

 そうなるか。

 まだ十歳にもなってないんだ。

 いくら早くから冒険者をしていても、金なんてそんなに持ってないだろう。


 そんなことを考えていると……


「ガント。実はわたし、お金持ちなんだよ。だからお金には困っていないので、ホントに良いところを探して欲しくて……ライがその、高くて良い場所に住んでいるということは、ライもお金持ちなんでしょ? だれか、良い家を売ってくれる人を知りませんか?」

「おい、パール! おまえ! どうして、そんなに金を持っているんだ! 宿屋にもナイショで、出てくるし……ヤバいことに手を出してないだろうなっ!?」


 ガントがパールを心配して、本気で怒りだした。

 まずいな……

 泣くぞ……

 すかさず、ソードが話しに入る。


「パール、あなた。まさかとは思いますが、迷い人になったのでは?」


「「えっ!!」」


 ソードの言葉に、ガントと声が揃う。

 まさか? 

 そう思ったとき、パールが話しだす。


「あーっ、ナイショですけど、実はそうなんです。 だから、ピアンタから逃げてきたんです……よくわかりましたね」


 まさか?

 横のガントが震え出して雄叫びをあげていた。



「うおーーーーっ!!」


 これはしばらく戻ってこないな……はぁ〜っ。


 話の続きはもう少しあとになるだろう……

 まさかの迷い人……


 そこからは、おどろきの連続だった。


 ピアンタ王国から王家に囲い込まれるのを恐れて逃げてきた?


 なに?


 ラメールでも、王家が囲い込むならセルバ王国に行くだと?


 なんだって? 


 エルフのように寿命が伸びた? 


 そんなことが……

 だから伯父と一緒に住むか、別に住む方が良いのか迷っていると?


 寿命の差でか……


 でもこれは、おれも経験している。

 別のほうがいいだろう……

 ソードも納得したようだ。


 それなら家を真剣に探してやってもいいな……


 今度は、なんだ!?

 (キン)しかない?

 金を大量に持っているのか!?


 わが国は、金があまり取れない。

 ちょうどいい。

 両替を提案してみた。

 よろこんでもらえたようだ……


 ソードの警戒も解けて、安心したのか馬車で先に寝るという。

 子どもだが、一応女の子。

 あとから馬車に入っていっても、驚かないように注意しておく。


 

「ガント、正気に戻りましたか?」

「ああ、ソード……大丈夫だ……」

「しかし、迷い人とは……おどろいたな」

「はい。もしパールがホントに迷い人なら、ライ? ラメール王国にとっても、すごく重要なことになるのではありませんか?」


 ソードが尋ねてくる。


「ああ、そうなるな。たぶん魔法袋も持っているだろう。持ってきた荷物が迷い人にしては少なすぎる。自分で金持ちだと言っていたからな……相当な(キン)を持って帰ってきていると思うぞ……」

「ライ、それだけじゃないだろう! あの国は魔道具もすごいと聞いている。パールがなにを持って帰ってきたのか、気になるよな……」

「ガントもそう思いますか? ライ、気づいていましたか? あの子の服は普通の革ではないように思います。もしかしたら、向こうで交換したモノなのかも知れませんね……」

「ああ。迷い人だと思ってよく見たら、上等なモノだとわかるモノがいくつかあるな……」

「どうします?」

「どうするも、なにも……まずはダンジョン近くのメルの町で、パールの理想にあった家を二つ探してくれ」


 ソードがうなずく。


「ライ、迷い人っていうのはラメール王国ではどういう扱いになるんだ?」


 ガントが顎に手をあてて聞いてきた。


「まあ、重要人物になるだろう」

「じゃあ、影をつけるのか?」

「たぶん。まずは父上に報告だな」


 馬車の中でパールは、持っていた手提げの袋を枕にして毛布をかぶり、座席の上で器用に丸まって寝ていた。


 おれも向かいの席で座ったまま目を閉じて眠ることにする……

 狭いな。

 ベッドで寝たいが、外の二人のことを思うと贅沢は言えない。

 これが一般、普通なのか?

 一般とは、狭くてつらいな……


 寝たのか、目を閉じていただけなのか?

 程よい時間で外に出る。

 

「お早いですね」

「ああ。狭いし、からだが固まってしまいそうになったよ」

「ふ、ふ、ふっ。良い経験です」

「ライ。もうパールを気にせず、馬車の寝室で少し寝てきたらどうだ? あいつは迷い人だ。一般とは違う。それにパールは簡単には起きないぞ。木のウロでも平気で寝れる子だからな!」

「ハッハハ! そうだな。いまも座席の上で丸まって寝ているよ」

「ライ。考えていたのですが、パールが持っている魔道具をわたしたちに見せやすいように少し仕向けてみてはどうでしょうか?」

「なんだ、ソード? おまえ、パールの魔道具をどうする気だ?」

「どうもしませんよ。ただ、どれくらいのモノを持っているのか、知っていて損はないと思いませんか。ガントも気になっているのでしょう? 都合の良いことに、ここにはわたしたちしかいませんから、危険なモノを持っていたとしても対処しやすいですしね」


 危険なモノ……


「まあ……そうだな。それじゃあ、まずはおれたちも魔法袋を持っているとわかるようにするか。パールに考えさせて、おれたちは害がないと安心させ自分も見せて大丈夫だと思わせるんだ」

「わかりました。少し朝食から変えてみます」


 そう言うと、ソードは自分の魔法袋からお茶のセットを取り出した。


 旅先では珍しいモノを少しずつ出して、様子をみるつもりだな……


 

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