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04. 出会い 

 ソードが一歩おれの前に立つ。


「ライ、馬車がきましたよ。少し後ろへ下がっていてください」

「ああ、でも大丈夫そうだぞ」


 御者をしているガントの顔が穏やかだ。

 

 馬車が広場で止まる。

 子どもが荷物を持って降りてきた。


「ガント! 早かったですね。この子が一緒に行く者ですか?」

「ああ、そうだ。パールといって、おれがいつも泊まっているところの宿屋に住んでいた子どもだったよ」

「そうか。なら、大丈夫だな」


 ガントが紹介しだす。


「この子は、パール。パール、ライとソードだ」

「パールです。よろしくお願いします」


 頭を少し下げてあいさつしている。

 礼儀正しい子なのか?


 な、なんだこの子どもは?

 目が一瞬合っただけで……

 一瞬、そう一瞬だけ、ドキッとしてしまった?!


 子ども、だぞ……

 気のせいだ……よな……

 

「あ、あぁ……パール。よろしく……」


 いまは、これが精一杯の返事になってしまう。

 おかしい? どうしたんだ……


「よろしく。パールって呼んでもいいかな?」

「はい、大丈夫です。ソードさん」

「ふ、ふっ。じゃあ、わたしのこともソードって呼んで……さんはいらない」

「っ!?……はい、ソード……」


 ソードが少し、警戒しているな……

 初対面のときにあの顔で、女っぽくラフに話しかけるのは、あいつの十八番。

 相手を油断させて、何かを引き出したいときに使う手段だ。

 あんな小さい子に警戒する必要があるのか?


 持って来た荷物も少ない。

 馬車の中にある荷物置き場へ荷物を置いてやり、すぐ出発する。

 

「ガント。はじめは、わたしが御者をします」


 ソードがガントに声をかけていた。

 まあ、妥当な選択だな。

 

 んっ、ソードがチラッとこっちを見たぞ。

 子どもと思って油断するなと言うことか……


 ハッハ……わかっている。

 軽くうなずいておく。


 さっきは不覚にも少し驚いたが、もうなんともない。


 錯覚か?


 これからはちょっと窮屈な旅になるが、まあ仕方ないな。

 早くわが国へ帰ろう。


 馬車が走りだしてしばらくするとガントが子ども、名はパールだったか? に話しかけていた。


 なんだ、気分が悪くなったら伝えろってっ?

 おい、ガント? 

 おまえそんなに優しかったか?

 それになんでおまえの横に座らせているんだ?


 おいっ! 近いぞ!

 あーっ、気になる……

 これではパールよりおれが二人を見ていて気分悪いだろ!

 おい! ガント!

 横に座っている子に、そんな近くからなにコソコソ話してるんだよ?


 えっ、名前の呼び方か?

 

「ガンさん、名前ホントはガントリーさんなんですね?」

「あぁ。みんなは長いから、ガントって呼んでるかな。あの宿屋の人たちだけがなぜか、ガンって呼んでいるんだよな」

「そうなんだ。じゃあ、わたしもガントさんって呼んでもいいですか?」

「ああ、好きに呼んでくれ。それからおれにも、さんは、いらん」

「はい、ガント。これからしばらく、よろしくお願いします」

「おう。六日はかかるから、よろしくな」


 なんだ、この会話は?

 なんなんだ? イライラする……


 ガント、近い。

 近すぎるぞ!

 もーぉっ、無理だ!


「パール! こっちへ座れ。進行方向のほうが楽なはずだ」

「ライ? おまえの座る場所が狭くなるけど、良いのか?」


 ガント、そんなことはわかっている!


「大丈夫だ。パールさぁ、早くこい」

「へっ、……ライさんの横ですか? わたしはこっちでも大丈夫ですよ」


 なにーっ!!


「パール。ライが良いって言っているから、向こうに座っておけ。絶対あっちのほうが楽だからな」


 よしガント、それでいい!

 やっと、来る気になったか。


「ライさん。気をつかってもらって、ありがとうございます」


 ライさん?!

 なんで? おれだけ、さんを付けるんだ?


「ライだ……」

「えっ?」

 

 わからないのか?


「おれのことも、ライでいい……さんは、いらない」

「おい、ライ? おまえ、どうしたんだ? なんか変だぞ?」


 ガント〜、変って言うなー!


 だまっててくれ……

 おれも、困っているんだ……


「どうもしない……おれだけ、さん付けが変だと思っただけだ……」

「そうか……まあ、そうだな」


 納得したのか? よかったよ。

 これで二人の気分の悪い姿を見なくて済んだ……



 ガタンッ!


 んっ、なんだ? もう休憩ポイントか?

 早かったな……


 みんなで馬車を降りる。


 トイレ休憩でパールが林の中へ……


「ライ、ここらへんは大丈夫ですよ。まだ安全ですから、そう心配はいりません」

「そうか、ならいい。大丈夫だな」


 ソードは鋭い。


 パールがトイレにひとりで行ったことを、ちょっと心配しているってことがわかったみたいだ。


 おれもトイレを済ませておく。

 実はこの馬車は特別な魔道具の馬車で、空間がだいぶ広げてある。

 いままで座っていた場所はダミーで、奥にリビングや寝室。

 トイレなんかもあるんだが……

 シークレットの機能過ぎて、一般の者の前では使えない。

 今回はパールが一緒だから、一般的な旅。

 普通を経験できる良いチャンスだと思って我慢だな。


 次はガントの御者だ。


 ソードの目が……

 おれの横にパールが座っているのが不思議なんだろう。


「えっと、パール? それじゃあ、ライが狭い……こっちへおいで……」


 おい、ソード。

 やっとパールが横にきたのに、なに言ってるんだ!


 こら、ソードのところへ行こうとするな!

 思わずパールの腕を掴んでしまった……


「大丈夫だ……狭くない。パールは、ここでいい」

「ライ? それでは狭く……大丈夫なんですね?」

「ああ……」


 ソードの目がつらい。

 あきらめたのか、パールに質問しだした。


「パール。あなたはどんな用事で、ラメール王国に行くのですか?」


 まあ、気になるよな。

 はじまったか……


「わたしは知り合いの人のお祖母さんのところへ預かり物を届けに……あとは観光でもしようかなっと……」

「そうですか。なにを預かってきたのか、パールは知っているのですか?」

「いいえ。袋に入れて預かったので中は知りません」

「そうなのですね? もし、変な モノ を預かっていたらどうするんです?」

「信頼している人なんで、大丈夫です!!」


 あっ、怒ったぞ。


「ふ、ふっ。怒らせてしまいましたか……」


 ソードの警戒する気持ちは、わかるが……


「おい、ソード。そのへんにしておけ……」

「ふっ。ごめんね、パール。ちょっとした確認だから気にしないで」

「はい、大丈夫です」


 ソード、もう少し警戒を解いてもいいだろう?

 これからの予定をパールに説明して、この場の雰囲気を変えているようだが……


 んっ!?


 腕に、パールの頭が……


 なんだ……パールは寝たのか……フッ。


 

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