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03. 不審な友 

 ガチャッ

 

 もう一人の側近。


 王立学校からの友が、馬車に入ってきた。


 キレイな顔をしているせいか、そこらへんの女より色っぽい気もするが、頭の回転がはやく剣の腕は間違いない。

 顔で騙されると、ひどい目に合う。


 エルフもドワーフも人族も、すべて混じっているからなのか、人族のように背は高く体格は良いがどう見てもこのキレイな顔はエルフだな。

 細かいことにも気のつく、良いヤツだ。


 こいつもおれと同じように事情があり、歳がだいぶいってからの入学だった。


 父親が騎士をしているせいもあるのか?

 学生の頃からおれの騎士になると言って、そばを離れないでいた。


 そして卒業後、本当に騎士となり、しばらく父王に仕え、ガントリーと同じ時期に側近になる。

 おれよりも若い、たしかいま七十歳のはずだ。

 

 有言実行。

 大したヤツだよ。


 名は、ソードリー。


 偶然だがガントリーとソードリーは、いとこ同士。

 父親がドワーフ族で、兄弟だ。


 一部のエルフ族以外、純粋な種族はもう数が少ない。

 いろいろな種族が混ざり合っている。

 そのおかげで種族間の争いも無く、バランスがとれているように思う。


 王族はバランスよく、人族も含め多種族に仕えられ守られている。



「ライ、お疲れ様です。ピアンタに着きました」

「順調に着いたな」

「はい。すぐ買い付けに行きますか?」

「ああ、そうだな。 ソード、しばらくガントが旧友に会いに行く。 あとを、よろしく頼む」

「わかりました。 ガント遅くなりますか?」

「いや、そんなに遅くはならないと思う。しばらくのあいだのつもりでいるが…… しかしなんだ。この二、三年でここの薬草の質がだいぶ上がったよな?」

「ええ、きっと採取するのに長けた者が出てきたのでしょう」


 そうなのか? それは、知らなかったな。


「採取の仕方で、そんなにかわるのか?」

「はい。違うそうですよ。 いまのピアンタなら、ポーションを買うよりも上質の薬草を買ってくるほうが良いポーションができると、薬師様がおっしゃっていました。 ここでポーションにされると、上質以外の薬草も一緒に入ってしまいますからね」


 ほーっ それほどか?


「わかった。 薬草を多く買おう」

「しかし、良い薬師様がラメールに戻ってきてくれてよかったよな!」

「ホントですね。 でも、あの薬師様がピアンタで頑張ってくれたおかげで、ここのポーションが比較的安定して手に入るようになったのですから……おかしなモノですね」

「ああ、そうなるな……それに、ピアンタで薬師の店も手に入ったしな……」


 実は、ラメール王国の息のかかった薬師の店がギルドの近くに存在している。


 これは、薬師様のおかげだ。

 ラメールにいるからだの弱い人族の家族のために、薬草の多いピアンタで薬をつくり続けていた。

 まあ半分以上、ピアンタの王族に囲われていたようなものだが……



 まずはその薬師の店で、質の良いモノだけ多めに買い受ける。

 あとはおとなしく、安全な宿屋に戻るだけ。


 今回は大切で貴重な薬草。

 キノコの女王が手に入ったと連絡がきた。

 それも、完璧な状態だと言う。


 高価で特別な魔道具を渡している価値があったな。


 見るのが楽しみだ。



 これは……


「ライ、完璧ですね……」

「ああ、ここまできちんと処理してあるモノは初めて見たな……」

「ええ、わたしもそうですね……」

「それも、二本……」


 店の薬師が、頑張りましたと誇らしげだ。

 色を付けて、代金を払ってやる。

 すぐに魔法袋に入れ、いまの状態を維持させておく。


 あとの薬草のことは、ソードに任せておけばまあ、大丈夫だろう。

 


 宿屋でくつろいでいると、ガントが戻ってきた。


 友には会えたようだな。

 しかし、その割には……


「ガント、どうした? 友と、何かあったのか?」

「ああ、やっぱり顔にでていたか…… なんだか、変なんだ…… どうも落ち着かないし、ソワソワしていてな……」


 腑に落ちない顔をしている。

 ガントは、直感で動くタイプだから何か感じるモノがあったのだろう。


 第六感。


 竜人族はどの種族よりもこれが敏感だ。

 それを無視して、良いことはまずない。


「…… そうか。 気になるようなら明日もう一度、寄ってからラメールに戻るか?」

「それができるなら、そうしたい。 いいか?」


 明日もう一度行けるとわかって、ホッとした顔をする。

 よっぽどだな。


「それがいいですね。 ガント、気になるならそうすべきです。 友は大切にしないとね。 しかし、だれです? ピアンタの友とは?」

「ああ、ラメールに住んでいた細工師カリンパニの孫だよ」


 ソードも知っているようだ。


「ああ。 それは…… すごく心配ですね」



 そんなことを話していた相手が、朝早くガントを訪ねてくる。


 女の子をひとり、おれたちの馬車に乗せてラメール王国まで連れていってほしいと言ってきた。


 こんな早朝、そんな変わったことを言ってくる友にガントは、不信感をいだいたようだ。

 何か口には出せない、よくないことに巻き込まれたのかと心配して、その子どもがいる細工師の店に一度その友と先に子どもを見に行ってくるという。


 安全のためにも、まあそれが無難な選択だな。

 

「何事もなければ、子どもは乗せて帰ってもいいからな。 念のため待ち合わせは公園にするが、大丈夫なら連れてこい」


「ああ、ライすまん。 ありがとう。 少し待っててくれ」

「ガント。 何かあれば、必ず一度戻ってきてくださいね。 安全第一ですよ」

「ああ、わかってるさ。 ソード、あとはよろしく頼む。 それから、子どもがいるから馬車を借りるぞ」


 確実におかしい。

 おれから見ていても何かありそうな、少しソワソワした感じの友と二人でガントは出て行った。


「何か、ありそうですよね」

「ああ、何かあるな」


 しばらくして、待ち合わせの広場に向かう。


 ピアンタに忍ばせていたラメールの影が数人、公園で待機しているようだ。

 ソードが手配したのだろう。


 荷物は全部、魔法袋に入れてある。

 身軽な状態でガントを待つ。



 ガラガラガラッ


 んっ あれか?


 思っていたよりも早く、ガントの馬車はやってきた……



 


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