22. 宴会
みんなが声を揃え、声のトーンを落として言ってくる。
「「「ツガイ様発見! おめでとうございます!!」」」
「まだ、ツガイ候補だ……」
「グフッ! それは、大丈夫ですよ! ライアン様をみてたら分かります。 あの子は、ライアン様のツガイ様です!」
「そうそう、ぜったいそうだよなっ! ライアン様、目であの子を追ってますよーぉ!」
「そ、そうなのか?」
村人がかわるがわる集まっては、好きなことを言ってくる。
「誰がみてもいままでのライアン様とは違うと分かりますよ! 分からないのは、ガントリーぐらいだな」
ガントを一斉にみんなが見る。
その視線に気づいたガントが、腕相撲をはじめていたようで応援だと思い、手を大きく振って期待にこたえていた。
「本来はカンの良い、よく気がきく子なんだけど……なんだか、抜けてるねぇ……」
ガントの親族か?
「そうだ。あいつはなんであんなに、色恋には疎いんだ? もしかしたら竜人族は自分のツガイ以外は興味がないから、そういうことがわからないのか?」
「ちょっとあんた、ライアン様も竜人様なんだよ! すみませんねぇ、ライアン様。この人は、もう……」
それは……
鋭いところをついているかもしれないな……
夫婦なのか、バシバシ男の背中を叩いていた。
「フッフフ。みんなが、ライのツガイ候補が現れたことをよろこんでいますね。自分たちが支えるお方が現れたかもしれないと、うれしいのですよ。宴会のあいだもパールのまわりには誰か大人がいて、観察され見守られていたことをパールは分かっていたのでしょうかね?」
「気づいていないだろう。ブドウに夢中だったようだしな」
かわいかった……
「王様にはご自身の口からも、お伝えになりますか?」
「ああ、そうだな。まだ教えるつもりはなかったが、迷い人にあの水晶だ……一度父上に会わないといけないだろう」
「はい、そうなりますね。あの岩が魔法袋に入るとわかりましたから、これからは影が動くことになるでしょう」
「まさか、自分たちの山を見張ることになるとは思ってなかっただろう」
「ガメイのところも、予知夢ヴェーゼの継承者が出てきて、めでたいこと続きだとよろこんでいるでしょうね」
「だろうな。まだシークレットの部分も多いが、カベルネは特別枠で警護付きの影になる」
「パール付きに育てないのですか?」
「歳が近いからそのつもりだったが、ヴェーゼの後継者ならまあ、安全に王付きの王宮担当が無難だろうな」
「そうですか。ではゆくゆくは、同僚になるのですね」
「はっはっは! そうか。ソード、楽しみだな」
ここら辺で適当におれとソードは抜け、休むことにする。
ガントは、まだまだ長い夜が続きそうだ……
♢
朝、村の者たちが集まってくれた。
おれというよりも、パール目当てか?
昨日早くに休んだ、年寄りが多いな……
ガントと飲んだ者たちは、まあ仕方ないだろう。
約束通り。
お礼ということで水晶を渡すと、ペクメズがすぐ反応する。
ほんの一瞬こっちをチラッと見ると、にっこり口だけ笑ってカベルネの横へ移動し、スッと二人消えていった。
カベルネ正解だ……
ガメイにはこれからしばらく、山の見張りを増やすように確認すると、もう手配済みだという。
さすが、村長だな。
最後にガメイがこそっと、話しだす。
「ライアン様。パール様がツガイ様だとハッキリ心に思われるまでは、あまり意識せずお暮らしください。ライアン様にとって心穏やかでいられる自由なときはこれであと数年になったようです。いまはご自身のことを中心に心がけてください。パール様には一刻も早くソードリーやガントリーのような護衛をつけられたらライアン様もご安心でしょう。他の影のことは、ドンとお任せください。心からお祝い申し上げます」
「……ああ。わかった、心する。ありがとう」
もう、ツガイ候補だとは訂正できないな。
パールもみんなとお別れしていた。
カベルネと戻ってきたペクメズが満面の笑顔でパールに土産を大量に持たせている。
村にだいぶ貢献したからな。
ソードも遠慮せずにもらっておくようパールに言っている。
カベルネは……まあ、疲れた顔をしていてもしょうがない、ほっておく。
馬車ではパールがペクメズからもらった物を確認して、ワインを一ケースおれたちにくれていた。
食事を担当しているソードがよろこんでいる。
「すぐ、二軒の家と両替用の金を用意するから、できるだけ早く会いにメルの町。おれの家までくるんだぞ」
「はい。わかったよ」
思わず念を押してしまう。
「なんだか、少しのあいだでしたが寂しいものですね」
「おれの顔の大きさの金を持って早くこいよ! ハッハッハッ!」
「あはっ! ガントの顔だね! わかった、探しとくよ」
今回、昼食もペクメズが用意してくれたのか?
休憩がてらその昼食を食べ、検問を越えると王都ゴタに到着だ。
検問はこの馬車とガントでフリーパス。
楽しい時間は、一瞬で過ぎていく。
ガッタン。
もう、着いたのか……
目的地に着くとガントが知らせるため馬車を止め、中へ入ってきた。
「パール、着いたぞ」
心配だ……
「パール、ホントに噴水広場で大丈夫なんだな?」
「はい、その近くなので大丈夫です」
「そこまで……一緒に行こうか?」
「そんな、ホント大丈夫。じゃあ……噴水広場、この近くでお勧めの宿屋はありますか? しばらく王都で観光しようと思っているので」
すぐ、ソードがうなずいて確認する。
「パールは何日ぐらいを考えているのですか?」
「うーん? まずは三日ぐらいひとつの宿屋で様子をみて、それからもっと良さそうなところがあったら、他を考えようかな?」
「わたしのお勧めする宿屋は、品もよく安心です。他には安全ではない宿屋もあるので、子どもひとりで泊まるなら、ここにずっといた方が良いですよ。まずは一週間、予約しましょう。少し待っててください」
そうパールに告げて馬車を降り、宿屋『マリン』を予約して戻ってきた。
宿屋『マリン』はソードの一族が経営している。
王都でも一流の宿屋だ。
あそこなら間違いない、安心だな……
ソードは宿屋と支配人の名前が書いてある紙をパールに渡す。
「ソードからの紹介で来たと伝えて、この紙をみせたら話が早いですよ」
なぜかパールは紙を、じっと見つめていた。
そしてニコッと笑うと。
「何からなにまでありがとう。じゃあ、いくね!」
寂しいどころかうれしそうに礼を言って、さっそうと馬車を降りてしまう。
「あっけないな」
「パールですからね」
「そら、はじめての王都だろ? 楽しいだろうよ?」
なんだか、胸にぽっかり穴が空いたような……
この感じはなんだ?
もしかして、もう寂しいのか?
おれのこのなんとも言えない、むなしい気持ちを無視してソードが告げる。
「それではライ、パールには今からメルの町へ行くと言ってましたが、お城に向かいますよ。王様に報告です」
ガントがうなずき、サッと御者へ向かった……




