20. 確信犯
ああ、やっぱり!
父親がカベルネの頭を叩いている。
叩かれて笑っているとは……
分かりやすすぎる確信犯だな……
ガントも気がついたのか、豪快に笑っていた。
こいつは、恋愛ごと以外は優秀だ。
パールも呆れている。
気づいたか……
まあ、まだ子どもだから仕方がない。
洞窟の場所はここから本当に近いようだ。
山の端になるのか?
それは、木の影にひっそりあった。
「おまえ、よくこんな細いところに挟まれたな?」
ガントがその岩の隙間を見て感心している。
「ここにこんな場所があったのか……」
何度もこの集落に来ているが、知らなかった。
父上に教えられていた、視野を広げてよくまわりを見る。
道を変え、さまざまな人の意見を聞く……
視察の基本なんだが、忘れていたようだ。
自分に抜けていた大切なことを思い出させてくれたな。
これは、カベルネに感謝か?
ソードが穴を覗いて、洞窟内の安全と空気の流れを確認しだす。
そのあいだ、ガントがおれのそばにつく。
よく連携は取れている。
岩はドア三枚分ぐらいか……
パールは無言で、すぐ岩を退けていた。
「おーっ!」
念願だったのだろう、カベルネが興奮して今度はガメイに頭を小突かれている。
まあ、父親とガメイはおれの手前カベルネを叱るのはしょうがないな……
思っていた以上に、中は広いようだ。
「おれがまず様子を見てくる。ここでしばらく待機していてくれ」
中にすぐ入りたそうなカベルネを制して、ガントが告げる。
サッと入って行ったガントは、すぐに戻ってきた。
「中はしばらくいくと地下に続いている。うまい具合にもう一段、下に降りれる場所があるから、今から少し降りてみる」
おれに目で確認してきた。
軽くうなずいてやる。
ガントは自分の魔法袋を出し、灯りの魔道具を取り出す。
おれたち三人は、一応の装備を持ち歩いているからな。
このメンバーに隠している必要はない。
こういう時には便利だ。
カベルネだけがガントの魔法袋を、目を大きく見開いて見つめていた。
危ない突発的な行動をしそうなカベルネに気を取られすぎていたのか。
パールが目をランランとさせ、声をあげる。
「わたしもガントと一緒にいきたい!」
忘れていた……
パールは冒険者だ。
それにつられるように、カベルネが反応する。
「パールがいくなら、オレだっていくっ!」
まあ、そうなるな……
まだどちらも子ども。
ソードがパールを止める。
「パール。ガントが安全を確かめたら、みんなで降りてみましょう」
不満そうだが、カベルネが自分も行くと言いだしたからあきらめたようだ。
カベルネはまた、父親に叱られている……
これは、しょうがない。
まだ九歳……
パールが少しおかしいのか?
一緒にしてやるとカベルネがかわいそうに思えてしまう。
まあ、暇にはならずにガントを待てたが……
なんだ?
ガント?
目が、顔が、さっきと違うぞ!?
何を持って帰ってきた?
興奮気味に、大股で近寄ってくる。
その様子にソードが一歩前にでた。
なっ?!
なんだ、これは?
水晶か?
ガントが水晶を直接おれに渡してきた。
ソードが少し慌てている。
「ライ、下はすごいぞ! 水晶だらけだ! カベルネのおてがらだぞ!!」
それだけ言うと、カベルネのところへ走っていく。
まだ小言を言われていたのか、そんなカベルネをすくい上げるように抱きしめて。
「おまえ、カベルネすごいぞ! すごい発見だよ! ここは宝の山だ! 水晶の山だったんだ!」
カベルネを抱いたまま、グルグルまわって大笑いしている。
「「「水晶!?」」」
みんな、あっけにとられているようだ。
「カベルネ! すごい発見だ! 中はすごいことになっているぞ! おまえ、すごいなー!」
パールとカベルネ一家はおどろきすぎて、次の言葉がでてこない。
そんなとき、カベルネがポツリとつぶやいた。
「やっぱり、夢のとおりなんだ……」
なに?
夢だと……
夢のとおり?
「なんだって? カベルネ、いま夢と言ったか?」
ガメイがカベルネの小さな声に反応していた。
やはり、ボケてないな……
洞窟の中は一段下に降りたあと同じような間隔で、もう一段下に降りれたそうだ。
まとめて報告しようと、ガントは灯りで確認しながらそのまま飛び降りたらしい。
下はガランとした、家二軒分ぐらいの広さで何もなかった。
念のため灯りをグルっとまわりに当てて確認し、帰ろうとしたそのとき、土壁にピカッと光っている突起物を発見したという。
証拠に持って帰ろと剣の鞘で砕いていたら、まわりの土壁が崩れて中がすごいことになっていたと報告してきた。
さっそくみんなで下に降りてみることにする。
地下まで、約五十メートル。
途中一段、降りるところがある。
三十メートルぐらいを、一度で飛び降りることができれば大丈夫だ。
たずねるとみんな飛べるというが、安全のために高齢のガメイと、まだ訓練を受けていないカベルネは、ソードとガントがひとりずつ連れて降りることに。
そこでもカベルネがパールがひとりで降りるなら、自分もひとりで降りると言いだし、今度は兄のメルロがカベルネに注意していた。
「カベルネ。自分が確実にできるか分からないことを、みんなで行動する大切なときに強がって見栄を張るのは間違っているよ。みんなにこれ以上迷惑をかけては、我が一族の恥になる。来年他の集落をまわればわかるけど、今はおとなしくみんなの言うことを聞いているんだ」
さすがは将来、村長になる子。
しっかりしている。
聞いていた、ガメイたち親子もうれしそうだ。
カベルネはまだ、秘密の基地のことも何も知らない。
訓練前だからな。
灯りを持ち下に飛び降りる。
土と石だけの空間に、一ヶ所土壁が壊れている場所があった。
そこをガントが崩したのだろう。
「ここだな」
その中は……
あたり一面が大きな柱のような水晶だらけで、おとぎ話の国にでも迷い込んだ感じだ。
とてもキレイでこの世のものとは思えない、神秘的で不思議な空間だった。
「「「うわーっ!!」」」
「ここ、水晶に囲まれている……」
すごいな……
長いモノでは二メートル以上もある大きな六角柱状の水晶が、上からも下からもなんなら横からも伸びてまわりを埋め尽くしていた。
「キレイ!? ここからみえるだけでも、家四軒分以上ある空間が水晶だらけだよ!」
パールも興奮している……
灯りをあてて見ると、パールのまわりは水晶だらけ。
水晶に包まれているようだ。
キラキラしたグリーンイエローの虹彩を持ったパールの瞳と水晶が光り輝いて、おれの心をときめかせる……
あぁ……キレイだ……




