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18. ツガイ候補 

 みんなが集まっている大岩のそばまで行く。


「パール、大岩を魔法袋に入れるんですよね?」


 ソードが確認している。


 パールはもう一度村長のガメイに、大岩がホントにいらないのか確認していた。

 必要なモノや移動するだけのモノは除去する前に教えてもらいたいようだ。


 ここ大岩の近くにいるのは、ガメイの家族とおれたちだけだが、村人以上の人数が遠まきにこちらを観ている。


 パールが腰のカバンから魔法袋をだしただけで。


「「「おーーっ!!」」」


 少しおどろいているな。

 おれもあの声の大きさにはおどろいたぞ。


 フッ、もうまわりの歓声は気にせず、大岩を除去することにしたのか? 


 少し大きな声で……


「大岩よーっ! 中に入れっ!」


 ほっほーっ。


 スッと大岩が消えた……



「「「おーーっ!! 消えたーーっ!!」」」


 また、すごい歓声だ。


 まあ、パールも気を利かせて、わざわざ言葉に出して少し演出していたからな……


 ちょっと照れている?

 かわいい顔が、ほんのり赤いぞ……


 おい! なんだ、あいつは? 


 感動したのか? 興奮したのか?

 カベルネがパールのそばまで勢いよく近づいてくる。


 腕を掴もうと手を伸ばしたのがわかったときには、思わずからだが勝手に動いて、カベルネの手を叩き止めてしまっていた。


 バシッ!


 あっ、まずい……


「急にパールに触れて、昨日のガントのようになったらたいへんですからね……」

 

 ソ、ソード、さすがだっ!


 このひと言で、カベルネとパールは顔を見合わせ納得していた。

 パールは慌ててカベルネに注意している。


「カベルネ、気をつけてよ!」

「あぁ、わかった。危なかったな……」


 ホントだぞ!

 勝手にパールに触れようとするなよ。

 おれのなんだぞ!!


 えっ??


 おれはいま、何を考えた?!


 まだ子どものカベルネに、おれは何を……

 落ち込むなぁ〜。


 パールはホントにツガイなのか?

 パールを見ても……よくわからん。


 かわいいが、それまでだ。

 父上のように母上にべったりついていたいとまでは思わない。

 あのツガイの二人をみているから……

 ああじゃ、ない……よな。


 やはり、違うのか?


 パールたちは一軒ずつ家をまわっていく。

 遅れてついていきながらも、ずっと考えてしまう。


 あっという間に昼になる。


 川辺でペクメズが用意した昼食。

 野菜と肉が入ったパンを渡された。

 ソードが一口食べて、渡してくれる。


「ライ、大丈夫ですか? おいしいですよ」

「ああ……」


 味なんて、どうでもいい。

 この気持ちの答えがほしい……


 そんなとき、パールが話しかけてくる。


「もしかしたら三日かかるかもしれないから、もう大岩の除去もみたのだし、先に王都へ向かってくれてもいいよ」


 なんだ?

 おれと一緒にいたくないのか? 

 なぜ、先に王都へ行かせようとするんだ?


「大丈夫だ……」

「パール、わたしたちもそんなに急ぐ用事はないので気にしなくてもいいのですよ。それに、この村の様子が分かるよい機会でもあるのです」


 ソード。

 あーっ、なんて心強い……ありがとう!

 しかし、パールは冷たいな……

 

 午後からもなんとか予定の家をすべてまわり、ガメイの家へ戻ってくる。



 家ではペクメズとカベルネの母親が、いろいろ家庭料理を用意してくれていた。

 明日は本格的に村人総出で、宴会をするそうだ。


 フゥー、疲れた。


 少し離れたところから、マヌカたちがこちらをジッと見ていたのが気になって……

 おれとパールの様子をニコニコと、ずっとみていたな。


 あれは居心地悪かった……

 まあ、カベルネの手を叩いたところも見られたからだろう。


 チラッとみた、マヌカのうれしそうな顔……

 心の声が漏れ聞こえていたぞ!


 ツガイですよね、ツガイでしょ? っと……


 今日はおれもずっと、考えていたからな。

 考えて分かるモノでもないんだが……


 こんなにツガイとは、わかりにくいモノなのか?


 城に戻ったら、一度父上に相談してみる?

 まあ、話はすでに伝わっているだろうから、会えば向こうが聞いてくるか……


 おれはいまも、こんなにパールのことを考えている。

 なのにパールはお構いなしにみんなと楽しんで笑っているということが、少し腹立たしくもありおかしくもあると感じてしまう。

 

 いまはソードがペクメズが作った糖蜜をパールに勧めている。


「ソードはこの糖蜜知っていたんだね? よく食べるの?」

「好きで食べるというよりは、食べさせられた感じですね」

「ふっ、カベルネも同じことを言っていたよ。すごいね! やっぱりこれ、からだに良いのかな?」


 なんだ、糖蜜で盛り上がっているのか?

 ペクメズの一族お得いの糖蜜は、甘いんだよな。


 子どもの頃、母上がペクメズに分けてもらい食べさせられた思い出があるぞ……

 いまはあんな婆さんでどっしりとして動けなさそうな感じだが、ペクメズは母上に影としてついていたこともあるからな……


 強くて実は頭の回転もはやい頼もしい人だ。

 小さなときは遊んでもらった思い出もある。


 そんなことを考えていると、先代の村長サンジョが急にソードとカベルネについて、核心をついた話をしだす。


 サンジョはいまの村長ガメイの父親で、八百十五歳。

 昔はすごい影だったと聞いている。

 

「ホ、ホッ、ホッ! そうじゃろうな。ウチのペクメズとソードのばあさんモラセスは姉妹だからのっ」

「「姉妹?」」」


 なんだ?

 カベルネとパールが顔を見合わせ叫んでいるぞ。


「「うそーーっ?!」」


 パールが知らないのは分かるが、カベルネも知らなかったのか?


「はっ、はっ、はっ!」


 ペクメズが豪快に笑っている?


「ソードは母親似の妹、モラセスに似てエルフ顔だからね。わたしは父親似のドワーフ顔だからあんまり似てないんだよ。わからなくって当然さ! あっはっはっ!」


 まあ、そうだな。

 ペクメズの言う通り、ソードはキレイな顔をしているモラセス似だ。

 モラセスは長く、王宮に侍女として勤めてくれていた。


「まっ、まっ、待ってくれ……ちょっと、待ってくれよ……オレは、ドワーフなのか? エルフなのか? 人なのか? なんなんだ……」

「母さん! まだカベルネには話していないんですよ!」


 カベルネの父親が少し慌ててペクメズに注意しているが、もう遅いな……


「ああ、そうだったね。でももう九歳、話すときさ! 今日はいろんな種族が揃っていて、ちょうどいいからね」


 ペクメズは放心状態の孫のカベルネお構いなしで話しだす……


 ペクメズ。


 あいかわらずだな……クックッ。


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