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17. 大岩  

 ソードがねぎらいの言葉をかけている。


「パール、お疲れ様でしたね」

「そうだぞ。パール、おまえ昨日から大活躍だな!」


 ガントはあきれぎみに、ねぎらっていた。


「へ、へへ」

「パール。どうやって、あの量の大ドクダミを抜いていったのですか?」


 一番の疑問だったことをソードがまず聞いていた。


「あっ。それは、あの散歩のときに見せたスティックで収納していったんだよ」

「やはり、そうでしたか……お年寄りばかりでしたからね。聞いてもなんだかはっきり分からなかったのですよ」

「あーっ、まあね……アハハ。そうだ、あのね。わたしここで、ライたちとお別れするよ」


 えっ?!


「なぜだ!」


 突然のパールの言葉におどろいて、思わず声にだしてしまう……

 パールがここでおれたちと別れる?


「そうですよ、急ですね? なぜです。何かあったのですか?」


 おれとソードの言葉に、ちょっとおどろいた顔をしたパールが話しだす。


「えっとね、この辺には石や岩が多いそうなの。特に畑に行く途中、大きな大岩があるから村の人たちが遠回りして畑へ行っているらしくって。それをなんとか改善したいから、わたしの魔法袋でどかしてほしいとカベルネに頼まれたんだよ。だから二日ぐらいここに残って大岩と、ついでに村の人たちの家のまわりにある石もじゃまみたいだから、全部片付けてあげることにしたんだ」

「 パール、良いことするなぁ〜っ」

「へへっ」


 ガントがほめていた。


 先ほど話し込んでいるようだったのは、これか?

 村のために残る……


 カベルネと言ったか?

 ちょこまかと、パールのまわりをめざわりな……


 ソードのほうを見る。

 スッと寄ってきて、こそっと確認してきた。


「ライ、どうします? やっぱり残りますか?」

「ああ、パールはどうもここで泊まるらしい。おれたちも同じようにするぞ」

「わかりました。ガメイを呼んで、わたしたちも泊まれるように調整します」


 ソードがガメイを連れて戻ってくると、ニコッと微笑んで。


「ライ、わたしたちもパールと同じように馬車を庭へ置かせてもらうことになりました。食事もパールと同じ、ガメイの家でお願いしています」

「ガメイ、よろしく頼む」

「はい、ライアン様。しかしホントに家にお泊まりではなくて、よろしいのですか?」

「ああ、庭でいい」

「話はまとまりましたね。それでは……」


 パールの方に少し近づくと、ソードが話しだす。


「パール。明日からはわたしたちもここの庭へ馬車を置かせてもらいます。ですのでいままでどおり、パールも馬車へ来てください」

「えっ?! ソード二日はかかってしまうよ? 先に行ってくれてもわたしは、大丈夫だよ?」

「いいえ、わたしたちも大岩が除去されるのを見学します」


 どうも訳がわからないような様子のパールに、カベルネがナイスなフォローをする。


「パール。おまえ大岩が除去されたりすることなんて、そうないぞ! オレでもぜったい観にいくけどな!」


 いいぞ! カベルネ!

 これで、パールは納得したようだ。


 今日は宿屋まで戻って予定通り宿泊する。

 明日は朝七時、この家に集合だ。

 大岩を除いてから、順番に家をまわることになる。


 ハァー、少し疲れたな。


 宿屋に戻り、そのまま夕食をとる。


 これは、うまいぞ。

 魔牛のステーキだな。


 ガントの好物。

 パールも好きみたいだ。

 そして問題のおいしい特別なワインを、パールを除いた三人でいただく。


 ソードがワインをじっと見つめていたパールに注意しだした。


「パールはまだ、飲めませんよ」

「パール、そうだぞ。おいしいワインだが、パールはまだ飲めないぞぉ! 早く大きくなるんだな。ハッハッハ!」

「ガント……そうだね……」


 ガントおまえ、パールも呆れているのを知っているか?


 ふぅっ。

 なんでもない会話だが、この用事がすんだらパールとはもう一緒にはいれないのか……

 こんな会話も聞けない。


 ああ、寂しい気もする。


 やはり、ツガイなのか?

 わからん……


 パールは明日の集合時間をソードにたずねている。

 おれのことなんて、ぜんぜん気にしてないようだ……

 ツガイならパールだって、何か感じるモノがあるんじゃないのか?


 パールはなにも感じてない?

 やはり、違うのか……

 う〜っ、わからん。

 

「じゃあ、五時半にここで朝食を皆で食べて、馬車でカベルネのところへ行くんだね」

「遅れるなよ」

「大丈夫だよ、ガント! ガントたちこそ飲み過ぎて、遅れちゃダメだよ!」

「ハァハッハッ! 大丈夫だ。任せておけっ!」

「はいはい。じゃあわたしはこれで、部屋に行かせてもらうね」


 かわいいじゃないか。

 少しもおれのことなんか気にせず、パールは部屋に行ってしまった……か。


 いるとわかると、探して目で追ってしまう。

 しかし、少し離れたら……


 大丈夫。

 そう、気にならない。


 ここだ……これが、わからないところだ。


 いまは何ともない。

 ここが、父上たちと違う……

 聞いていたツガイと、違うところなんだよなぁ……

 

 ハァ〜っ。


「ライ、なにため息ついてるんだ? こんなにうまいステーキに貴重でうまいワインを飲んでるのに、ため息はないだろぉ?」

「……そうだな」

「ガント……あなたは……フゥー。少し、このワインを買っておきましょうか。それから明日は一日歩き回りますから、お酒はほどほどに」

「ハッハッハーッ! ソードは、相変わらずだな!」


 相変わらずなのは、おまえだろう? ガント。


 豪快な笑い声がパールのいない食堂に響き渡り、今日が終わろうとしていた……


 ♢


 朝、村にはたくさんの人が集まっている。


 村長ガメイの挨拶をうけているあいだに、パールがカベルネに話しかけられていた。


 パールのそばにいるのは、だれだ?


 んっ、カベルネの兄か?

 見たことがある顔だな……


 おい、カベルネ。 

 むやみに男をパールに近付けるのはやめてくれ。


 大岩が除去されるのを観ようと村中、いやそれ以上に人が集まっている。


 影のように少し隠れて、マヌカも来ているのか?

 あれは……

 大岩の除去というよりパールを見に来たな。

 近くの木の影にいるのは、特殊部隊か……


 なぜだ? 


 ハァーッ。

 

 パールの似顔絵を描きにきたのかっ!?

 そうか……他の基地に配る気だな。


 ソードがそばにきて、こそっと話す。


「人族は成長が早いんです。いま描いてもすぐ変わってしまいますよね? それでも良いのでしょうか?」

「そうだな。よほどマヌカたちはうれしかったんだろう……まだ、候補だと何度も言っているのに」

「まあ、少し気持ちはわかりますけど。お祝いですから」


 お祝いなのか?

 

 マヌカ、まだ候補だぞ……

 

 

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